今回からはベンチャービジネスの活性化事例を紹介します。(注1)
(注1)ベンチャービジネスとは何かについては「第2回 :2つの起業タイプ」をご参照ください。
http://www.og-cel.jp/column/1279678_15959.html
「注目する起業都市」として常に名前のあがる福岡市。福岡市を特集する書籍や雑誌記事も多く刊行されています。一体、福岡市では何が起こっているのでしょうか。(注2)
(注2)本内容は下記の論文に基づいています。 (必要に応じて、一部情報を更新しています)
奥田浩二「福岡市における地域起業政策 −福岡市の起業“ムーブメント”を考える」
『地域産業政策研究』(龍谷大学京都産業学センター・地域産業政策研究プロジェクト)
第3号, 1-19頁, 2018年
なお、福岡市の活動は、厳密にいえば「ベンチャービジネス」に限定されるものではありません。
ここでは、活動内容の濃淡からベンチャービジネスに区分しています。
福岡市が起業に大きく舵をきるようになったのは、2010年に高島宗一郎が市長に就任してからだといわれています。高島市長は就任後の2011年に米国のシアトルを訪問。福岡市の半分程度の人口のシアトルが、アマゾンやスターバックス、マイクロソフトを生み出したことに感銘を受けます。そして、2012年9月に「スタートアップ都市・ふくおか」宣言を行いました。同年12月に策定された「第9次福岡市基本計画」では「創造的活動が活発で、多様な人材が新しい価値を生み出す」という目標を設定し、「新たな挑戦を応援するスタートアップ都市づくり」を施策に織り込んでいます。
高島市長は起業支援に強いリーダシップを発揮し、次々に起業支援に関連する施策を実現していきます。
一部をあげると次のような項目です。
2014年5月 国家戦略特区「福岡市グローバル創業・雇用創出特区」
2014年10月 スタートアップカフェ開業
2015年3月 「グローバル創業都市・福岡」ビジョン
2015年12月 スタートアップビザ受付開始、 スタートアップ法人減税(国税)
2016年6月 スタートアップ賃料補助
スタートアップカフェは起業のためのワンストップ窓口であり、起業相談や起業セミナーを開催します。当初は、高島市長も起業セミナーに参加しています。市長の参加は、起業家に多くの勇気を与えるものでしょう。
このような一連の活動を通じて、起業活動を活発にすることを「起業のムーブメントを起こす」と表現しています。
そして、2017年4月にオープンしたのがフクオカ・グロース・ネクスト(Fukuoka Growth Next、以下FGN)です。
FGNは起業支援の総本山ともいえる拠点です。場所は、福岡の天神駅近く。旧大名小学校をリノベーションしたものです。2棟3階建てで、延べ床面積は約3,800m2(開設当時)。個室とシェアオフィスを備えています。開設にあたり、別の場所で活動していたスタートアップカフェなどの起業関連機関をFGNに集結させています外装や内装では小学校の名残を残しています。(注3)
(注3)その後リノベーションが行われました。本年(2019年)5月31日に、リノベーション後のオープニングイベントが開催されています。
図表1. 開設当時(2017年)のFGNの様子
筆者撮影(地図はGoogle Mapを加工)
FGNが開設すると100社を超える起業家や起業関連機関が入居します。開設後2年ですでに入居企業の資金調達額が70億円に達しているとのことです。
様々な特徴的な起業や機関が入居していますが、特にユニークなのが九州大学起業部です。次回はその取組みをご紹介します。(次回に続く)
・市長がスタートアップ都市宣言を行い、“起業のムーブメント”を起こそうとしています。 |
・ベンチャービジネスの活性化 福岡県福岡市の事例(中編)
第1回:起業の現状はどのようになっているのか
http://www.og-cel.jp/information/1278928_15932.html
第2回:2つの起業タイプ
http://www.og-cel.jp/column/1279678_15959.html
第3回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(前編)
http://www.og-cel.jp/column/1279684_15959.html
第4回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(中編)
http://www.og-cel.jp/column/1279955_15959.html
第5回:スモールビジネスの活性化 茨城県取手市・龍ヶ崎市の事例(後編)
http://www.og-cel.jp/column/1280447_15959.html
(執筆者:エネルギー・文化研究所 研究員 奥田 浩二)
本コラムでは、起業で地域を元気にするための鍵を考えていきます。記載内容は、執筆者が入手した情報をもとにしていますが、執筆者の意見を含んでいます。各内容は、執筆者が所属する機関・企業の公式・公的な見解を表明するものではありません