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2023年10月12日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話39 サーキュラー・エコノミーを深く考えてみよう!

サーキュラー・エコノミーを深く考えてみよう!

 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 持続可能な社会を実現するために提唱されているサーキュラー・エコニミーの概念。今回は、これを深く追求してみたいと思います。

 

 

1.Rを拡張して考えよう!

 

廃棄物処理の概念に3R(スリーアール)があります。リデユース(減量)・リユース(再利用)・リサイクル(再生)です。この3Rの概念をつかって、サーキュラー・エコノミー(CE)を考えてみたいと思います。

CEと3Rの詳細は、前回のコラムを参照)

 

 


もちろん、 CEと3Rとはまったく違うものであり、廃棄物だけを対象として考えられた3Rは、CEとは別次元の発想です。ただ、3Rの概念はわかりやすいということと、CEではリサイクルが重視され過ぎてしまう危険性があることから、今回は3Rの考え方を拡張することでCEをより深く理解してみましょう。

 

 

 

2.リデュース(減量)

 

現代社会は、モノに溢れています。大量生産によって製品ひとつ当たりの製造原価を極限にまで低減させ、人々にモノを安価に提供してきました。モノがない時代はこうした手法が役立ち、経済が発展して人々の暮らしも豊かになりました。

 

しかし、資源を大事につかうとなれば、話は変わります。

「どのように工夫すれば、モノの製造そのものを減らすことができるのか?」

リデュース(減量)の概念をモノの製造に拡張して考えてみよう、というわけです。

 

もっとも手っ取り早いのが、「丈夫で長持ちさせる」ことです。あるいは発想を変えて、「ほかの用途にもつかえる」工夫ですね。キッチン鋏に栓抜きの機能がついているようにすれば、栓抜きを保有する必要がなくなります。このような発想は、どこにでも転がっていると思います。

 

使用頻度が低いモノでは、シェアやレンタルを中心に考えれば、製品の流通量を減らすことができます。自家用車の利用頻度が低いことから生まれたカーシェアがこれに当たります。地域でのカーシェアシステムが普及すると、自動車の生産台数にも大きく影響することでしょう。

もちろん、こうしたシステムがさらに普及するには、人々の生活様式やモノに対する考え方も大きく変わらなければなりません。

科学技術の発達も重要です。もし完全自動運転が実現したとすれば、車が必要な時に家の前まで呼び出して乗り、目的地へ着いたら乗り捨てればいい。自家用車どころか車庫を持つ必要すらなくなります。

 

科学技術の発達は、モノに対する概念を根底から変える起爆剤となる可能性もあります。

典型的な事例として、音楽の楽曲配信があります。今まではレコード、あるいはCDが何枚売れたかが指標となっていました。しかし、オンライン配信が主流になると、その曲が何回聞かれたかが問われ、CDというモノの価値がマニア的な収集目的になってしまいました。

 

リデュース(減量)の概念をモノの製造に拡張して考えてみると、製品ひとつ当たりの利用頻度を上げることにつながり、製品の価値を「モノからコトへ」と変え、最終的には大量生産システムそのものを変革していくことにつながっていきます。

 


3.リユース(再利用)

 

つかい終わったものを捨てずに、もう一度使用するにはどうすれば良いか?

すぐ思い浮かぶのが、ブックオフやメルカリに代表される中古品の流通システムですね。

 

中古品の再利用は、全体から見れば一部の利用者に限定されているため、大量生産システムが崩壊する事態には至っておりません。しかし、製品メーカー自体がこのような再販システムを手掛けはじめると、世界は変わってきます。

 

そのためには、修理しやすい構造が必須となります。あるいは、修理をメーカーへ委託するのではなく、自分で修理できるような構造や部品提供まで考える必要があるでしょう。

オランダの携帯電話メーカーであるフェアフォンの製品は、自分で携帯電話を分解して基盤などの部品を交換できるようにしています。それどころか、部品の交換時に性能をあげてアップデートできるようにまで工夫されています。

 

モノをたくさん売って収益をあげることが基本となっている現状を変えることは容易ではありません。しかし、将来的にそのような時代が訪れるとしたら、先鞭をつけた企業こそが次代を牽引していくことになるでしょう。

 

ここで注意がひとつあります。企業は自社製品を利用して欲しいがために、自社独自の仕様にこだわりがちです。これを、「囲い込み戦略」と呼びましょう。自社の仕様で固めると、修理も交換もすべてその会社に依頼されます。なので、どの企業も囲い込み戦略を選択します。

 

しかし、囲い込み戦略がいきすぎると、結局はリユースの阻害要因になりかねません。

たとえば、ビールの洗瓶システムがあります。茶色いビール瓶は、どこのメーカーの中身を飲んでも瓶の仕様は同じですし、利用後は違うビール会社に送られてもキチンと再利用されます。

本当のリユースとは、利用者がある企業にしばられることなく自由に選択できることが望ましい。しかし、規格を統一させることは、ひとつの企業では絶対にできません。

政府や業界団体が民意を尊重してトップダウンで決定させるしか、打開策はありません。しかも、企業の独自仕様の製品が市場に出る前に規格統一しなければならず、とても難しい問題ではあるのですが、避けては通れない道なのでしょう。

 


4.リサイクル(再生)

 

最後の最後に、リサイクル(再生)です。

リサイクルとは、完全分別をしていない限りさまざまな素材が混じってしまうため、もとの製品より品質が低下してしまうという欠点を抱えています。エネルギーをもう一度投入して再生したにもかかわらず、同じモノをつくることができないのです。

 

なので、分解しやすい構造や細分化した収集システムをとることが必須なのですが、複雑になればなるほど、やらない、できない人が増えてしまいます。

資源保証金のようなシステムもありえます。たとえば家電リサイクルのように、予め費用を負担してもらっておくという手法があります。しかし、心無い業者が費用だけ受け取って不法投棄をする事例もあとを絶ちません。

回収事業を透明化(不法投棄を防止)するには、ビール瓶の回収システムのようにメーカー自らが率先して事業に乗り出し、1瓶〇円を返却するような回収にインセンティブを与える方法が望ましいのでしょう。

 

いずれにしても、過去から続けられてきた大量生産システムをどこで変革するのかが、大きな岐路になります。「もったいない精神」が息づいている日本から変革を発信していけると、いいですね。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。



 


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