越山 健治
2015年03月02日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2015年03月02日 |
越山 健治 |
都市・コミュニティ |
都市システム・構造 |
情報誌CEL (Vol.109) |
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災害に備えるためには、「物理的強度」と「社会的強度」両方の要素について考える必要がある。
古来、数多くの自然災害を乗り越えてきた日本で、都市防災の未来像を考える上では、新しい「社会的強度」の獲得が解となるであろう。
20世紀の日本における都市計画、防災施策も振り返りつつ、21世紀の都市防災計画を定義し直すために必要な事柄について考えてみたい。
災害と日本社会の関係
日本では数多くの自然災害が発生し、各地域に被害を毎年のようにもたらしている。そして記憶に新しい2011年の東日本大震災の状況は、激甚な津波被災地区はもちろん、広範囲の強い揺れ、土砂災害、広域停電、原発事故、帰宅困難者等々、東日本一帯で災害が発生したといっても過言ではない。21世紀に入り、私たち日本社会は「災害」との関係を見つめ直すことを求められているのであろう。
日本における防災対策の構図
しかし現在の日本で、一人一人が日常の生活を送る上で、頻繁に自然災害を意識し備えないとならない環境にはほとんどない。「災害」は特別な状況であり、非日常な環境を意味する言葉である。そう考えると日本社会は、世界諸地域と比較しても相当高いレベルの「災害防止強度」を持つ環境を有しているといえる。
日本でほとんど被害の生じないレベルの地震動や台風、大雨が、場所を変えると大規模な災害へと様相を変えることはよくある。これらは、(災害被害)=(災害を起こす自然の力)×(社会の脆弱性)によって説明される。(社会の脆弱性)は、つまりは「災害防止強度」であり、これらが物理的強度と社会的強度で構成されていると考えると、日本社会は災害に対抗する一定の社会の力を有している(脆弱性が低い)と表現できる。特に、治山・治水の管理、構造物の強度、自然現象のモニタリングおよび情報通信といった科学技術による物理的強度の効果は非常に大きい。
この環境は一朝一夕で生まれたものではない。災害の歴史を辿ると、約70年前、太平洋戦争終了直後の日本では、度々大規模災害が発生していた。さらに30年遡ったとしても、地震・噴火・洪水・台風・火災など多くの大規模自然災害が発生している。人生80年とするとほんの一世代前までは、現在の我々が想像するよりはるかに「災害」と人との距離が近い環境にあったといえる。