今年5月にアップさせていただいたコラムで、住空間の陰影のことを書きました。私が育った京都の町家における空間の「奥行き」と「陰影」、それに対し、現在住む3LDKのマンションのフラットな空間。おそらく子どもにとってはかなり違いのある空間だと思われます。子どもが情緒豊かに育つためには、やはり空間の「奥行き」や「陰影」は大切なものではないかと感じます。
我が子は7歳と4歳で、生まれた時からマンション住まいです。少しでも母の育った町家空間を知ってほしいと思います。先日、家の近所で町家の再生工事があり、そのお手伝いを子供が行うというイベントに、子供と一緒に参加しました。土壁の下地となる荒縄を竹に編みこむ作業を手伝いながら、どのように感じたのかはわかりませんが。
「奥行き」や「陰影」以外に、もう一つ感じる大きな違いは「宗教的空間の有無」です。私が幼い頃、同居していた祖母は、毎日必ず神棚を拝み、仏壇の水を替えて手入れをしていました。「悪いことをすると、ばちがあたる。」「誰も見ていないと思っても、神さんが見たはるえ。」そんなことを言われて育ちました。しかし、フラットなマンションの空間には、神棚も仏壇もありません。うちの場合は、子どもの通う保育園がお寺なので、そこで宗教的空間に触れることができるのですが、そうでもなければ、マンション住まいで宗教的な感覚を体験することも難しいと感じます。
子どもを取り巻く生活環境としては、住空間だけでなく、地域環境の状況も大きく変わりました。昔のように、子どもだけで道で遊んで、そのまま公園やお寺などに遊びに行き、誰かの家にあがりこんでおやつをもらって帰宅する、などということは本当に少なくなっています。うちは共働きですので、特に小学校に上がるまでは、子どもの生活は朝に保育園に登園し、夜に保育園から帰宅するというもので、「地域の空間」というものが、そもそも皆無でした。
子どもを取り巻く生活環境が、果たしてこのままでよいのか、少し不安に思う今日この頃です。