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2011年03月11日 by 加茂 みどり

子どもの記憶

 子どもの頃の記憶がずっと残っている、ということは、誰にでもあると思います。そして成長とともに、その年齢の理解力に応じ、その記憶の解釈が変わっていくということも、みなさん思い当たることがあるのではないでしょうか。

 私にもいくつかあります。幼稚園の頃、私は向かいに住む女の子と遊ぶことが多い毎日でした。その日も二人で家の前の道で遊んでいたところ、家の中から、母に呼ばれ、もう遅いから帰りなさいと言われました。私は表にとって返し、もう帰ると言って家に入ろうとしたのです。すると、向かいの女の子は、もう少し遊ぼうよ、と言います。でもだめなんだ、と帰ろうとすると、その子の母である向かいのおばさんから、「遊んでくれないなら、これから先もあなたとは遊ばないよ。」という意味のことを言われ、泣きだした記憶があります。

 しばらくは、「もう遊ばない」と言われて、ただただ悲しかった記憶であり、同時に、いつもやさしいと思っていたおばさんの豹変が恐ろしかったという記憶でした。しかし少し年齢が上がると、その記憶を思い出すたびに、子どもに対する態度としておばさんのあの態度は、大人としておかしいのではなかったか、という批判の気持ちを持つようになりました。相手の都合を考えずに自分の子どもと遊んで欲しいというのは、いかにも勝手じゃないか、などと思うようになったのです。

 そして今、当時の私と同じくらいの女の子の母となりました。気ままな女の子です。「もう○○ちゃんと遊ばない」などと言って、友達を置いて、ふらりと別の場所に行って遊んでいます。そんな姿を見ていると、「そんなことしていると、もうお友だちは誰も遊んでくれなくなっちゃうよ。」と言いたくなります。

 結局最初に例としてあげた私の記憶も、実は私が、今の我が子と同じ態度を友だちにとっていたのではないか、と思うようになりました。おそらくおばさんは、上記の私の思いと同じ発言をしたのではないだろうかと。この記憶の解釈にたどりつくまでン十年です。(向かいのおばさん、長い間悪者にしてごめんなさい。)

 こんな風に、年齢とともに解釈の変わった記憶を、私はいくつか持っています。そのことを思うと、本当に子どもを侮ってはいけない、と思うのです。今、この子と交わすこの会話は、いつか大人の知性で理解される時がくる。そう肝に銘じて我が子と接するようにしています。

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