2011年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの方々が被害を受けられ、心からお見舞い申し上げます。今回の地震それに伴う津波および原子力発電所の事故では、多くのことを考えさせられました。災害への備え、災害発生時の対応、エネルギー・セキュリティのあり方、コミュニティの役割等日ごろあまり意識しないことが、いざ災害が発生し、被害が日に日に増大するにつれ、大きな問題として浮き上がってきて、これを機に改めて考え、見つめなおすことが必要になってきたと思います。
エネルギー問題については、今後日本だけでなく世界中で議論がなされていくものと思われますが、私も持続可能なエネルギーや環境について、引き続き検討していきたいと思っています。
今回は、寝たきりで要介護5の認定を受け自宅で家族全員で介護している父を持つ身として、災害時の要介護高齢者について考えてみました。
現在、我が国で要介護認定(要支援1〜要介護5)を受けている方は、約500万人(2010年7月末現在、独立行政法人福祉医療機構)もおられます。今回の震災でも、多くの要介護高齢者が被害を受けられています。別の施設に移られた方、一般の避難所に移られた方、あるいは引き続き自宅で介護を受けられる方、この方々へのこれからの対応が重要です。
施設に移られた方は、介護設備があるので物理的には大丈夫でしょうが、環境変化や介護してくれるスタッフが今までの施設のスタッフと異なる等精神的に不安定な状態になる可能性があり、ケアが必要です。
一般の避難所に移られた方は、介護設備がないため、リハビリができず寝きりになったり、飲食や排泄で周りの方々に家族共々気を使って、孤立する可能性があります。周囲の方々の理解と手助けが必要です。また、一般の避難所に移られた高齢者の中には、移動や長期の避難で体調を崩される方も出てくるでしょうし、ストレスから認知症になったり、運動不足から身体機能が低下し要介護者になっていく可能性もあり、これらの方々についても避難所の方々やボランティアの手助けが必要です。
一番問題だと思うのは、長距離の避難移動に耐えられない等で被災地に留まって在宅介護を受けておられる方々です。訪問看護の方がこれなくなったり、デイサービスが受けられなくなったりで、家族だけで相談する相手もなく介護をしなければならないケースがあります。また、タンの吸引機(写真参照)や人工呼吸器を使われておられる方にとって、停電は死活問題です。人口呼吸器は言うまでもありませんが、吸引機が使えなくなるということは大きな問題です。タンの吸引はこまめに行わないと誤嚥性肺炎になり死に至るケースもあります。我が家も昼夜を問わず、タンがからんだ症状がでたら、吸引機でタンを吸引しています。今回の計画停電では、そういう家庭には小型発電機を貸し出すということも聞いていますが、騒音と一酸化炭素を含む排ガスを発生する発電機を使うのはたいへんです(使わざるを得ないのですが)。自宅で使っている吸引機のバッテリーの有無を確認したり、足踏み式あるいは手動式吸引機の購入も検討するようになりました。また、在宅介護にかかわらず、水の確保も重要です。脱水症状が起きないように水分補給が必要ですし、誤嚥性肺炎を防ぐための口腔ケア(口の中の掃除)用のきれいな水が必要です。災害時の家族だけでの介護の負担は極めて大きなものとなります。
以上述べてきたように、災害時の要介護高齢者の避難や介護は、家族だけでは無理であり、医師、看護師さん、介護師さん達の協力はもちろんのこと、周囲の方々の協力、気配り、思いやりが必要であるし重要です。私たちは日頃から周囲の高齢者、乳幼児、障がい等のハンディキャップを持っておられる方々の存在を認識し、日々の生活の中でそれらの方々やご家族と接し、コミュニケーションを図り、災害時等のいざという時にそれらの方々の手助けができるようなコミュニティを形成しておくことが必要ではないでしょうか。