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2011年11月17日 by 弘本 由香里

大阪と東北・野田村“てっぱん”交流

「これは大事件だ!」と、大阪のとあるお好み焼き屋さんで“てっぱん”を囲みながら、私は歴史が動きだす現場に立ち会っているような興奮を覚えたのでした。

そもそもの始まりは阪神・淡路大震災まで遡る物語です。1995年の震災をきっかけに誕生した災害救援NPOの一つに、日本災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD、理事長渥美公秀さん)があります。2011311日の東日本大震災後は、被災地のなかの岩手県北部・野田村に拠点を設け、複数の大学や地元の団体とともに長期的な支援を行うネットワーク「チーム北リアス」を結成して、活動を続けています。

私も大阪・上町台地界隈のまちづくり活動のなかでNVNADとの縁があり、この夏、知人たちとともに野田村を訪ねる機会に恵まれました。現地では、チーム北リアスの発案で、この機に合わせて大阪のお好み焼き・焼そば・たこ焼を焼いて、仮設住宅で暮らす方々に少しでも楽しんでいただければという企画が待っていました。私もみごとに大阪のおばちゃんの役をもらって、ほんの少しですがお手伝いに加わりました。ここまでは序章です。

さて、その後です。夏の終わりから秋の初めにかけて幾たびか、野田村の貫牛利一さん(久慈市観光物産協会専務理事)たちが復興への物産PRのため、三陸海岸北部の海山の幸をトラックに積んで大阪や阪神間にいらっしゃいました。一仕事終えると、大阪の生活感溢れる空堀商店街界隈や生野コリアタウン界隈の、知る人ぞ知るお好み焼き屋さんで、にぎやかな交流会です。大阪で暮らす者にとってはごく当たり前の、お好み焼の“てっぱん”を真ん中に老若男女が雑談に興じる風景ですが、遠来の貫牛さんは感激し、野田村の復興に必要なのは「これだ!」と、膝を打ったのだそうです。

「これはあの懐かしい風景ではないかと」と。そう、東北の原風景、囲炉裏を囲む談笑の風景が、“てっぱん”を囲む風景に重なったのだそうです。長年親しんできた住まいやコミュニティを失って、慣れない仮設住宅で暮らしている方々が、自然に集っておしゃべりしながら心と体をあたためることのできる場が欲しいと思っていたのだと。みんなで地元の食材を持ち寄って楽しみながら作るお好み焼きと、気の置けないおしゃべりのなかから、きっと力が湧いてくるのだと。

そして1113日、大阪で大賑わいの「生野コリアタウン共生まつり」の人波の中に、「みちのく市」の幟と野田村の貫牛さんたちの姿もありました。帰りのトラックには、お好み焼きの“てっぱん”テーブル4台が積み込まれました。生野コリアタウンのすぐそばで、お好み焼きやたこ焼きやベビーカステラなどのガス器を製造・販売する吉村健一さん(旭進ガス器製作所社長)が、被災地に送り出すこの日のために、心を込めてメンテナンスし磨き上げてくれた、太鼓判付きの中古のお好み焼き台です。

秋が深まり、やがて雪降る冬を迎える被災地の一角に、あったかい “てっぱん”が姿を現します。さて、どんな素敵なお好み焼きと、復興の物語が生まれてくることでしょう。

 

※写真は生野コリアタウン近くの「オモニ」のお好み焼き(大阪市生野区)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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