先日、明石の漁協のタコツボオーナーになりました。7、8月にタコツボ漁を4回して、所有するタコツボに入ったタコを送ってくれます。4回ともタコの獲れなかった場合でも、明石ダコ1匹は必ずもらえる保証付きです。
タコツボで思い出したのが、政治学者の丸山真男先生です。日本の学問はタコツボ型であり、欧米はササラ型である、と図式化したからです(注)。
タコツボ漁では、タコツボを1本の縄で並列につなげて使います。共通の根元がなくツボがそれぞれ孤立しています。タコツボと対照的なのがササラです。ササラは、竹の先を細かくいくつにも割ったものです。共通の根元から細かい枝が分化しています。たわしのように、食器などの洗浄に使われます。
欧米では、包括的・総合的な学問から専門化・個別化が進んでいきました。日本では、欧米ですでに専門化・個別化していた学問を明治になって取り入れました。その結果、日本では、共通の基盤のないかたちで専門が分かれ、それぞれ仲間集団を形成し、相互に言葉が通じなくなっています。
丸山先生の指摘から半世紀、学際的な取り組みも増えていますが、タコツボから脱するには至っていないようです。今回、本物のタコツボのオーナーになりましたが、専門のタコツボのタコにはならぬよう心して、実践的な研究に取り組みたいと思います。
(注)『日本の思想』1961年、岩波新書