夏の電力需要を押し上げる最大の要因は冷房です。設定温度を高めにして扇風機の併用や衣服で調整するのが省エネの定番ですが、そもそも冷房を必要としない室内環境ができれば電力消費は最小限で済みます。
その工夫の第一は「部屋に熱を入れない」ことです。外部からの熱は伝導・対流・放射(輻射)によって室内に侵入します。冬の暖房時に比べて内外の温度差は小さいので、暖房を念頭にした断熱性が確保されていれば伝導による問題は小さいでしょう。対流(空気の流れ)による熱の侵入は窓を閉めれば防げます。もっとも、風通しの方法は外気温に応じて別に考える必要があります。そこで最も効果的なのは放射対策、つまり直射日光が室内に入らないよう遮蔽することです。
夏季、太陽は東北東から昇り、高い仰角で南中し、西北西に沈みます。大まかに言って、住宅の東西面へは横から、南面へは斜め上から太陽光が注ぐと考えればよいのです。これらに対して、日本の伝統的な家屋は雨を防ぐ深い庇で夏の日射も防いでいました。
南面する開口部(窓)の上に出幅が1m程度の庇やバルコニーがあれば、夏至の後1ヶ月程は日射が窓から入ることはありません(緯度による地域差あり)。しかし、最も気温が上がる8月になると太陽高度が下がり始め、日射を防ぎきれなくなります。これに最も有効は手立ての一つが「オーニング」の利用です(写真)。これは可動シート庇とでも表現すればよいでしょうか、個人商店やカフェテラスなどにも利用されるテント状の日除けのことです。庇の先にオーニングを伸ばせば部屋への日射を防げるばかりか、前面のテラスを影に出来るので、照り返しや建物本体への熱伝導を防げます。
一方、東西面への日射遮蔽に庇はあまり役立ちません。窓の対策としては、ガラス面の外側に遮蔽物を下げること。スダレやヨシズが効果的です。ゴーヤや朝顔を利用した緑のカーテンなら、見た目にも涼しげですね。私が実践しているのは、使い古しの室内用ブラインドを窓の外側に吊るすこと。風が強いときは使えませんが、内部に設置する場合に比べて圧倒的に日射遮蔽の効果が高いです。
外壁がコンクリートで断熱材が内側の場合、午後の日射を受ける西側の壁はたっぷりと太陽熱を吸収し、夜になっても室内に熱を放射し続けます。これを防ぐには、ツタを這わせるのが最も効果的です。但し、勝手に伸び過ぎないよう剪定などの手入れが必要です。