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2012年07月12日 by 濱 惠介

【夏を乗り切る】水で冷やす合理性

前回はプールで体を冷やすお話をしました。普段体が触れている空気に比べ、水の冷やす力はけた違いに大きいのです。白ワインを氷水の入ったワインクーラーで冷やすことを思い浮かべてみましょう。冷蔵庫では時間がかかるのに、氷水だとあっという間に冷えます。「氷水は0℃だから」と考えるのはやや的外れです。

 
大人の体温は36℃前後ですから、室温が30℃なら体は冷やされる傾向にあるはずです。それなのに暑く感じるのは、体の発熱を十分放出できないからです。一方、水温30℃のプールに入ると、冷たい程ではないのに確実に涼しくなります。

 
少し理屈っぽくなりますが、その違いは体を包む空気又は水の「比熱」や「熱伝導率」などが関係します。物質が温まりにくい性質は「比熱」で表され、水を1とした場合、空気は0.241グラムの物質を1℃上昇させるために必要な熱量です。この数字では41の差しかないように見えますが、空気の比重は水の800分の1程度ですから、体積当たり(例えば1?)で考えると水は空気の3000倍以上の熱容量(熱を蓄える能力)があるのです。つまり水は少々の熱を吸収してもあまり温度が上がりません。

 
もう一つの視点は熱伝導率。空気は熱を伝えにくく、水の24分の1程度です。発泡スチロールなどの断熱材が空気の粒を閉じ込めているのはこの性質を利用したもので、寒い時に重ね着をするのは外気と体の間に空気層を確保するためです。仮に室温が30℃で無風なら、肌に接する空気は体温に近づき放熱がうまくゆかないため「暑い」と感じます。風を送れば温まった空気が吹き払われると同時に汗の蒸散作用が高まって、気温が同じでも涼しく感じます。

 
このように、体を包む空気は体温を保つためには好都合ですが、熱を捨てたい時はいろいろ工夫が要ります。これに対し常温の水(水道水は最高でも28℃程度)に浸かった体からは、熱が吸い取られるように流れ出します。温度の違いより、水が空気と全く異なる熱的な性質を持っていることがポイントです。この特性は高温・低温の場合、命の危険にもつながります。

 
家や図書館に冷房がなかった時代、真夏の受験生がタライに張った井戸水に足をつけて勉強した、という話も残っています。体の一部を水につけるだけでも血液の循環で体全体からの放熱に役立つ、と理解できます。水をうまく利用すればエアコンなしでも体を冷やせる訳を納得いただけましたか。

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