閑さや岩にしみ入る蝉の声
松尾芭蕉が山形の立石寺で詠んだ句です。「奥の細道」の中でも有名ですね。
この句に詠まれた蝉は何蝉だったのでしょうか。蝉の種類によって、句の印象も違ってきます。昭和初期には大論争がありました。斎藤茂吉はアブラゼミだと主張しました。それに対し、小宮豊隆はニイニイゼミだと主張しました。芭蕉が立石寺を訪れた7月に実地調査が行われ、茂吉がニイニイゼミだと認めたことで決着がついたそうです。
国内に広く分布する蝉としては、以下の6種類が主なもののようです。鳴き声が暑く感じる順に並べてみます。主観的な感覚ゆえ、人によって順番が違ってくるでしょう。
1.クマゼミ 「シャンシャン」と午前中に鳴く
2.アブラゼミ 「ジリジリ」と午後に鳴く
3.ニイニイゼミ 「ジィージィー」と早朝から夕暮れまで鳴く
4.ミンミンゼミ 「ミーンミーン」と午前中に鳴く
5.ツクツクボウシ 「ツクツクボーシ」と午後に鳴く
6.ヒグラシ 「カナカナ」と朝夕に鳴く
これらの中では、ヒグラシ(写真)の声は涼しく感じます。これにはあまり異論がないと思います。高音の澄んだ金属的な響きで、しかも朝夕に聞くからでしょうか。「枕草子」でも趣のある虫としてあげられています。
ヒグラシなど蝉の声に耳を澄ませば、一時暑さを忘れることができるかもしれません。試してみてはいかがでしょうか。