夏を乗り切るためのヒントとして、このコラムで体の一部を水につけ、水の物性(比熱、熱伝導率)を利用した体からの熱の放出の紹介がありました。
今回は、水の気化熱(蒸発熱)を利用した暑さ対策の紹介です。夏の風物詩の一つに「打ち水」があります。家の前の道に打ち水をすると、その水が気化(蒸発)する際に、周りの熱を奪い、涼しく感じます(水1gが蒸発する際に、539calの熱を周りから吸収します)。オフィス街でも打ち水はされており、毎年、夏季に御堂筋打ち水大作戦が行われています。ただし、最近の道路はほとんどアスファルト舗装されており、日中の炎天下のアスファルトに打ち水をすると蒸発した水蒸気で逆に熱くなります。朝の気温が高くなる前あるいは夕方の気温が下がってくる時に行えば、効果を持続させることができます。
この水の気化熱を夏の猛暑対策と合わせてヒートアイランド対策に利用する試みがされています。ミスト散布です。建物の軒下、窓際、ビルの屋上、業務用空調設備の周辺等多くの箇所で実際に行われています。加圧した水を微小な噴射孔(数十ミクロン程度)から空気中に散布し、人工的に霧(ミスト)を発生させ、水を効率的に気化(蒸発)させ、その気化熱として周囲の熱を奪って、対象空間を効果的に冷却するものです。大阪ガスビルの屋上でも試験的にミスト散布がされました(写真参照)。
家庭でこのミストを利用する方法として、扇風機に向かって霧吹きで水をかける方法があります。扇風機の風で部屋の中に霧(ミスト)が散布され、その気化熱で涼しく感じることができます。霧吹きスプレー式扇風機も販売されています。大型の霧吹き扇風機もあり、スポーツイベントや野外コンサートで活躍しているそうです。
この夏、水の力で、道路、家の中を冷やしてみましょう。