昨年11月、自宅で介護してきた父が亡くなりました。約5年前、原因不明の高熱が出て、近くの病院に入院させましたが、体力が弱まり、口から食事が出来なくなり、主治医と相談し、おなかに穴をあけ、胃に直接食べ物を注入するための管を通す「胃ろう」手術を受け、流動食を注入していました。半年間入院していましたが、父の家に帰りたいという気持ちが強くなり、自宅に連れて帰りました。主治医からは、突然息を引き取る可能性が高く覚悟しておいてくださいと言われました。
ここから自宅での介護生活がスタートしました。要介護5の認定を受けていたので、訪問看護、訪問リハビリ等あらゆる介護サービスを受けました。また、口から食事が出来ない状態で退院したのですが、家内が少しでも良いから口から美味しいものを食べさせたいと、小さなスプーンで父の好きだった食べ物を約1時間かけて少しずつ口に入れる日が続きました。そうすると、量は多くありませんが、少し口から食事が出来るようになり、元気が出てきました。
訪問看護に来てもらっているとはいうものの、日ごろの体調管理は家族が行います。家内は、朝、昼、晩と父のバイタルチェック(体温、血圧、脈拍測定)、タンの吸引などを行い、その日の父の状況を毎日介護ノートに記載していました(写真)。在宅医、看護師はそのノートを見て、前回以降の父の体調を把握することができ、高く評価されました。この介護ノートは24冊にも及びました。在宅医は、家族の日ごろの体調管理、ケアにより、退院後、5年も生きながらえたのではないかと感心されていました。
この5年の介護で考え、悩んだことは、「父をどこで看取るか」ということでした。在宅医からは、「平穏死という親孝行〜親を幸せに看取るために子どもがすべき27のこと〜」という書籍を渡され、また、西宮市で開催された「家で最期を迎えるために〜在宅緩和ケアが目指すもの〜」というセミナーにも参加し、看取る場所を考えました。やはり、父が望んだ自宅で看取ろうと覚悟を決め、施設にも入れず自宅で介護してきました。結局、11月中旬に、朝何ともなかったのが、夕方苦しむこともなく、知らぬ間に息を引き取りました。幸せな亡くなり方だったと思います。
平成25年版高齢社会白書によると、内閣府が実施した「高齢者の健康に関する意識調査(平成24年)」において、最期を迎えたい場所は「自宅」が55%と半数を超え、「延命治療は行わず自然にまかせてほしい」人が91%という結果が出ているそうです。私は、今年還暦(60歳)を迎えますが、元気な内に家族に、「自宅で看取られたい」、そして「延命治療は不要」と明言しておきたいと思います。