日々の生活に欠かせないコミュニケーション。伝えたつもりが伝わらなかったり、意に反して伝わってしまったり。苦労していませんか。
コミュニケーションの捉え方は、大きく二つの型に分けられます。通信型と対話型です。世の中に広く受け入れられているのが通信型。もう一つの対話型を知れば、コミュニケーションでなぜ苦労するのかがよくわかります。
通信型では、コミュニケーションは送り手が意図した意味を受け手へ一方向に伝えるものとします。この通信型は、電話で信号を効率的に伝達するために考え出された通信理論が基になっています。よく聞く「コミュニケーションは言葉のキャッチボール」の喩えは、そうした一方向でのやりとりを相互に繰り返す例です。しかし、電気信号とは違って、意味はボールのように送り手から受け手にそのまま届けられるようなものではありません。
一方、対話型は、臨床の現場を観察していて見つけ出されたのが始まりです。対話型では、コミュニケーションは送り手と受け手の別なく双方向で循環し、意味は受けた側が解釈するものとします。まず、コミュニケーションはしないわけにはいきません。何もしなくても、伝える意図がなくても勝手に伝わってしまうのです。例えば、携帯電話に留守電を入れても返事がない夫に、妻は何かやましいことでもあるのではと訝ります。
また、コミュニケーションは、内容を伝えるだけでなく、同時に当事者間の関係も定めます。例えば、帰ってきた夫が妻にいつもより丁寧に話すと下手に出ているということになります。そして、意味はその時のその場の状況に基づいて受けた側が解釈します。例えば、食事に誘う夫の発言に、妻は通常は喜んでも、先のような経緯があると一層怪しむことになります。
通信型ではなく、対話型でコミュニケーションを捉えてみてはいかがでしょうか。いろんな気づきを得られると思います。
※平成26年2月21日、毎日新聞(大阪本社)夕刊に掲載の「互いにやり取りし合うことで」を改題したものです。