CELでは、西宮のNPO法人こども環境活動支援協会と協働して、第一次産業(農林水産業)での体験学習を通じて、次世代を担う青年層の「生きる力(生活力・人間力)」を育む学びの社会デザインの研究を2011年度から2年間行い、体験学習プログラムをつくりました。そして、今年度、大学生を募集しこのプログラムの実証試験を行い、3月8日の修了式で1年間のプロジェクトを終えました。
農業体験を中心に、林業、漁業体験および食育・火育を加え、さらに第一次産業の現状と課題、エネルギーと環境問題、生物多様性の保全などの座学も行う、計32回の体験プログラムです
実証試験終了後の大学生たちへのアンケート調査では、農作業の技術が向上しただけではなく、山・川・田畑・海のつながりや第一次産業間のつながりが理解できた、第一次産業の課題や従事者の苦労を知り、また日常の生活においても、食べ物への感謝の気持ちを持つようになり、季節や天候の変化に敏感になったなどの回答があり、自活力、自然対話力、コミュニケーション力、協働する力、問題解決力などの生活力が向上したことが確認できました。
一方、学生たちだけでなく、私もこの1年間、貴重な体験をしました。私は、このプロジェクトの担当として、全てのプログラムに参加しました。自分の娘たちよりの若い世代と一緒に農地の開墾や森林での間伐などを行い、夏場の農作業では、熱中症になり、また、森林観察のための山登りでは、息絶え絶えになり、学生たちに助けてもらいながら活動を続けました。
1年間のプロジェクトを終え、研究員の立場としては、次世代教育プログラムの構成とその評価方法について学ぶ事が多くありました。個人の立場としては、大学生を対象としたため、大学の講義の関係で体験はほとんど土曜日・日曜日となり、日ごろ時間を持て余していた休日を有意義に過ごすことができました。まもなく定年を迎えますが、毎日が休日になったらどうなるのだろうか?今まで会社人間で、仕事から離れると何もすることがなく、家に閉じこもるのではないだろうか?などと心配にしていました。結局、嘱託としてしばらくは仕事を続けることにしましたが、今回の体験から、漁業や林業は難しいですが、農業なら体のためにもなり、新鮮な野菜が収穫でき、まずは、自宅の庭で野菜作りをすることにしました。これで、休日対策の目処がたちました。実家には後継者がいない農地があり、将来はそこでの農業の可能性もあると思っています。
3月8日の修了式では、学生たちが、畑で自分たちが育てた野菜を使った料理や各自が自宅で作った一品を持ち寄り、お世話になった人たちへの「お・も・て・な・し」の感謝会を企画してくれました。心のこもった手料理が美味しく(写真上)、一度に子供が2人から11人に増えた気持ちになりました。また、農地では、この1年間の活動を手作りのカレンダーを使って報告してくれ(写真下)、学生たちの成長を実感しました。
今後は、この3年間の研究・実証試験の成果を活かし、次世代教育プログラムの仕上げとその持続可能な仕組み作りに取り組みたいと思っています。