健康なまちって、なんだろう?
健康寿命をあげて医療費を削減する、高齢者の行動様式を変容させよう、健康プログラムで高齢者を家から外に出て活動してもらうなど、地域は動き出しつつあるが、健康なまちの一面を捉えているにすぎず、健康のまちの全体像を捕捉していない。
健康なまちの全体像を見るため、子どもたち、青少年、中高年、高齢者、障害者、難病と闘うサバイバーから見えるまちにおける風景はそれぞれ違うはずだ。健康なまちについて、人を主人公に考えようと、健康なまちづくりシンポジウムを3月に開催した。ユニバーサルデザイン研究所赤池学所長のコーディネートのもと、柳本晶一全日本女子バレーボールチーム元監督、陸上の朝原宣治さん、シンクロの巽樹里さん、パラリンピアの山本篤さん、心理学者の平井啓先生、都市計画学者の角野幸博先生という「健康」を鍵に様々なフィールドの専門家に集まっていただき、健康なまちづくりに向け、健康なまちの定義を行い、誰が誰と、どのように健康をちりばめるかの議論を開始した。
基調講演として「心と五感に訴求するデザイン」を健康なまちのコンセプトをユニバーサルデザイン総合研究所 赤池学所長に語っていただく。
・ユニバーサルデザインとなにか?
・パーティシペーションを生み出す(参画性のデザイン)
・障がい者は弱者ではなく、感性のアスリートである
・まちづくりには、ハードウェアとソフトウェアに加え、「センスウェア(心と五感に訴える価値)」と「ソーシャルウェア(公益として
の価値)」が求められる
・キッズデザイン(子どもたちの安全安心に貢献するデザイン、創造性と未来 を拓くデザイン、子どもたちを生み育てやすい
デザイン)を追求することは子どもやママだけでなく、障がい者やお年寄りも暮らしやすいまちになる
・環境・サスティナブルデザイン―そもそも私たちに本来備わっている「心と五感のセンサー」を総動員して、健康なまちづくり
をデザインする
第二部は各カテゴリーからの報告。
青少年育成活動から朝原宣治(大阪ガス)が「ドイツの地域倶楽部をモデルとした地域コミュニテイ倶楽部へのチャレンジ」、高齢者健康活動から追手門学院大学の巽樹里特任助教が「マスターズシンクロを通じて『いくつになっても美しく元気でありたい』を応援したい」、スズキ株式会社の山本篤さんからは「障がい者アスリートが提案する健康なまちとは」、大阪大学平井准教授から「がん経験者の視点を新たな価値に社会に活かす」、関西学院大学の角野幸博教授から「スポーツや健康を都市にどうビルトインすれば『健康なまち』ができるのか」をそれぞれプレゼンいただいた。
そのあと第三部のパネルディスカッションでは、「これからのまちづくりの担い手に求められること」をテーマに幅広いフイールドから多様な視点で健康なまちとはなにか?を話し合った。健康なまちをアスリートだけで考えたり、医療関係者だけで考えるのではなく、このように、異なるジャンルの経験・知見を交差させることで、新たな価値が創出される。
最後に、柳本晶一元監督の言葉が印象的だった。
「オーストラリアがワールドマスターズゲームズを何度も誘致している。これをたんにスポーツイベントとしてだけ捉えておらず、まちづくりに向けた戦略的なストーリーで取り組んでいる。このイベントを契機に地域に活力を与え、そこに住んでいる人々が誇りを持ち、健康力を高めるようなまちづくりを進め、世界でいちばん住みたいまちに生まれかわった。
そのワールドマスターズゲームズが関西で2021年に開催される。スポーツのみならず文化、食、生活、医療、建築などそれぞれがつながり、化学反応をおこすことで、まちを変えていく。
まさに近畿が本来持っていた佳さ、強みを掘り起し再起動していくのがワールドマスターズに取り組むだ。2021年は決して先の話ではない。様々な世代、メンバーの目線、見識、経験をまちに持ち込み、考え、行動していくプロセスのなかで、健康なまちなおしができる」と健康なまちづくりシンポジウムを締めくくられた。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 5月24日掲載分〕