10万人が住む都市はドイツでは「大規模都市」だという。高松氏が住んでおられる「エアランゲン」は、大阪でいえば阿倍野区の人口規模。10万の都市にひとつの大学、5つの研究所、劇場5つ、ミュージアム4つ、映画館4つに、文化フェスティバルが5つ。域内の情報流通をになう地元新聞、地域倶楽部などのNPOが740もある。そのなか地域スポーツ倶楽部は100。
北京五輪でメダリストの朝原宣治氏が大阪ガス入社後に単身留学し世界のアサハラの基盤を埋め込んでいただいたのが、このドイツの都市にある地域スポーツ倶楽部だった。
日本に久々に帰国されたドイツ在住のジャーナリストの高松平蔵氏に、「地方都市の質を高めるメカニズム─クオリティ・シティの条件」をテーマに講演いただき、スモール・ミーティングをおこなった。
日本の都市がこれから抱える課題に、ドイツはすでに取り組んでいる。地域でのエネルギーの地産地消を進める「シュタットベルケ」や健康寿命の伸長などを目指す「地域総合型倶楽部」、地域経済と文化を融合された「文化プログラム」など、総合的にデザインされた都市戦略として取り組んでいる。
しかしそれぞれ単独の取り組みだけを見るのではなく、産業と都市、経済と文化、市民と都市との関係や仕組みを含めた都市戦略全体を捉えている。高松氏からのメッセージは3つ ①都市は規模ではなく「場の質」 ②クオリティ・ループとそれを動かす自治の力 ③価値をアップデートする発想が大事であると。
明治維新で日本はドイツから多くを学んだ。外から学び日本的なるものに編集し、日本を再構築した。そしてこれからさらに、人口減少・少子高齢化・成熟社会が進む日本において、「地方都市」が強いドイツに学ぶことが多い。
高松氏の「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」は地域創生を考える人にとって必読の書。淡々と語りかける話しぶりのなか、日本とドイツの都市の本質を見抜く、極めて骨太のジャーナリストだ。さすが世界都市「平城京」をつくった奈良出身者だ。
高松氏はドイツで柔道を実践されており、日本の柔道家の憧れの雑誌「近代柔道」に寄稿されている。これまた凄い。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 11月9日掲載分〕