理論だけでは世の中は動かない。地道な実践活動だけでは飛躍しにくい。理論と実践とを組み合わせることが大切だ。
コンテンツとコンテクストという言葉がある。お客さま視点で世の中で起こる動きを踏まえて集めた情報(コンテンツ)と、時代の流れ、社会背景、文脈を鳥瞰して読み解いていく情報(コンテクスト)をマトリックスに一枚の紙に並べて見える化する。
その情報地図を、歴史・過去からの基本潮流という軸と、お客さま視点からこうなるだろう、かくありたいと思う未来の姿からバックキャスティングするという時間軸と、自ら、自社という「内という軸」と、社会、海外、競合などの「外という軸」を掛け合わせて、編集・融合・化学反応を起こし新たな価値を創造し、都市・地域・社会を再起動していく。
エネルギー・文化研究所として中長期の未来予想図を考える作業をおこなった。様々なアプローチで、これからの社会を読み解こうとしたが、解像度の高い「未来予想図」は描けなかった。これまでの延長線上では未来を読み解けなかった。社会構造は逆転し諸相に「適合不全」が顕われはじめている。
人口・経済が右肩上がりの時代環境が終わり、人口減少、超高齢・単身時代、中国・東南アジアなどのアジア経済の拡大などへと、明らかに時代が変わっているのに、これまでと同じ社会・経済システム、制度・仕組み、従来ベースで経営している現代では、諸相に適合不全が生じるのは明らかである。キーワードは「適合不全」。社会を成立させているベースの価値観「パラダイム」が転換している「基本潮流」という時代の変化に気づいていない。
気になるのが文化という概念。文化(Culture)という言葉を芸術や伝統芸能と考えがちだが、もともとはラテン語の「耕作・栽培」が語源であると認識している人が少ない。
作りたい物が耕作できる場を探し、種を蒔き、水と養分を与え、雑草や害虫を取りのぞいて収穫し、種をとり次に繋ぐこと。地域ごとに育てたい物に適した手順と、ルールに従って確実に各手順をつないでいかねば育たない。しかし今の日本では、この本来の文化をつくるという方法論が忘れられている。今の日本では文化の定義が誤解されていて、方法論が理解されていない。
地域ごとに収穫される物は異なる。衣食住生活、企業、学校、地域社会、都市も同様で、耕し育て収穫し、種をとり、次に繋げていく。それぞれの地域が大切にしてきたこと、守ってきたこと、歴史や風土によってそれぞれの文化が生まれる。どこの町も同じように見えるようではいけない。駅をおりたら道路を走っていても同じような風景に見えることはいいことなのか?独創的な地域文化があってこそ日本は強くなる。
都市や地域という「場」は自然発生的に都市・地域がつくられるものではない。都市・地域という「場」にはそれぞれの必然性、地域性、歴史性があり、それらを踏まえ、この場をこうしたいという想いがなければ「場」は変わらない。
過去と現在が断絶し過去の本質を学ばない、内向きで外から新たなことを学ばないという現状。過去と未来の軸、内と外の軸という4つの軸にて掛け合わせ、その都市が地域が本来持っていた本質を掘り起こし、都市・地域を再起動(ルネッセ)したい。
詳細は、CELホームページ(情報誌CEL115号「外に出て「日本」を見直す」)をご参照ください。
http://www.og-cel.jp/search/1245759_16068.html
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 3月3日掲載分〕