法人向けの営業を担当していたころ、各企業を訪問すると、各企業ごとに空気やにおいの違いを感じた。事務所内どころか、お客さまの敷地内に入った瞬間に感じる。受付、廊下、執務室、工場の空間や、通りすぎる従業員さんの挨拶、所作などを通じて、その企業が大切にしていることを感じる。
それは、企業文化の一種だろうが、その企業の考え方、勢い、活力を感じる。
その空気なり、においを生むのは建物ではない、そこで働く人たちだろう。その空気やにおいを生むのは、そこに働く人々の考え方や価値観、行動様式をつくりあげるのは、その会社における教育であり、その会社内での学びの成果そのものではない。
その「学び」ということそのものを学ぼうと考えた。
新しい学びが生まれようとしている。世の中が安定していた時代には、教えられた知識で答えを導き出せばよかった。しかし、構造変化が次から次へとおこり、常態化している今日、自ら学んだ知識で答えを創り出さねばならなくなった。誰もが幼児のときにはそうであったように、自らが主体的となり創造性を発揮して学ぶことが必要ではないだろうか。
エネルギー・文化研究所が設立以来30年で初めて「学び」を情報誌CELの特集テーマに取りあげた。これまでCELでは、「○○を学ぶ」をテーマとしてきたが、そもそもの前提である「学ぶ」ということを学ぶこととした。これを「メタ・ラーニング」という。
メタとはなにか?メタとは、ある言葉の上に付けて、その語を超えた「高次にある」ことを表す。メタ・ラーニングとは、個々の具体的なラーニング、たとえば算数・国語・理科・社会・体育などについてのラーニングを超えて、ラーニングということそのものについてのラーニングを意味する。学びを学ぶということは、メタ・ラーニングにほかならない。
学びを学ぶねらいは、各人に本来備わっているにもかかわらず眠っている創造性を呼び覚まし、解き放つことといえる。幼児がみなそうであるように、人は生まれながらにして本来創造的である。
これまでの学びによって身についた発想では、本来持っていたはずの創造性が抑え込まれてしまう。かつての工業社会では、各人が創造性を発揮するよりも、「Do more better」、標準化して改善を繰り返し、効率的に生産できるという大人を育成してきた。しかし、現代の情報社会では、各人が創造性を発揮して、「Do different」、つまり差別化し新たな価値を生むイノベーションを起こせる大人を育成しなければならなくなった。
いまこそ、新しい学びを学ぶことが必要である。今回情報誌CELにて伝えたかったメッセージだ。
学びを学ぶを特集した「情報誌CEL 113号」はホームページ掲載の電子ブックからも閲覧可能です
http://www.og-cel.jp/issue/cel/1239795_16027.html
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明、主席研究員 鈴木隆)
〔CELフェイスブック 7月26日掲載分改〕