この10年でいちばん変わったこと ── たとえば分らないことがあると、スマホで手軽に検索する。スマホで情報が手に入ると、分かったような、できるような気がする。これまでのトレンドでは考えられないことが起こっている。
昔は時間をかけて色々な本を読んだり、人に教えて貰いに行ったり、資料を集めたり、現地に調べに行ったりして、試行錯誤をしながら失敗からも学び、力をつけていった。このような成熟プロセスや期間があったからこそ、臨機応変に危機が乗り越えられた。画期的な技術や仕組みやビジネスモデルなどがイノベーションをおこし、社会や価値観を変えた。
時代を読むということは、その時代の出来事(コンテンツ)を追いかけるだけではなく、それが生まれた背景・文脈(コンテクスト)を重ね合わせていくことである。
エネルギーという軸で歴史をみていくこととする。
かつて夜は暗かった。
50万年前、人類は火を発見した。2つの木片をこすり火をおこした。さらに火打ち石で火花をおこすという『技術』を生み出した。火をおこし、小枝や枝草、家畜糞などに火をうつし、暖をとり、調理をおこない、明かりを得た。人類はとてつもないエポックメイキングの方法論を身につけた。これが『第1のエネルギー革命』だった。
この「火の発見」という第1次エネルギー革命は、人の生活・社会を劇的に変えた。おそらく今のIT革命以上のものだったろう。火を使う調理となったことによって細菌を殺すことができ、人が食べられる動物や、植物を飛躍的に増やした。また火でうみだした明かりによって夜でも活動することができ、寒さが凌げ、冬を乗り切れるようになった。火の発見によって人の行動は広がり、人口が急激に増えた。しかしながら、火をつくりだすために木が必要となり、人は森を伐採し、森林が衰退した。
お湯をあたためることができるようになった。調理をすることができるようになった。暖房することができるようになった。夜も明るくなった。そしてモノをヒトを動かすということ。
人は「動かす」ため、牛や馬など動物の力を利用した。効率的に動かすために車輪のついた荷車という技術を考えた。さらに水の力を使ってエネルギーをつくり、風の力を使ってエネルギーを生み出した。人は使いたいところでエネルギーをつくり動かした。まさに今でいう個別分散システムが各地域で構築されていた。自然の生態系のなかで、人はエネルギーをつくり、暮らすという時代をつくった。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 4月21日掲載分改〕