「カツオ今季初水揚げ」がトップ記事だった。
「水産都市」気仙沼の情報を届けるのは購読率9割以上の「三陸新報」。世の中は新聞離れといわれているが、この地元新聞は気仙沼に密着した記事を丹念に取材して市民に届け、気仙沼の人に圧倒的に支持されている。
「まず家に新聞が届けられたら、裏から読みます。まず『ご葬儀告知』を見て、次に1面の『水揚げ情報』、そして『漁業通信』というこの3点から読みます。そのあとは普通に読むのですが・・・」と気仙沼の人に話を聴いた。
「ご葬儀告知」「ご会葬御礼」がその地元新聞には大きく載っている。
それだけこの地域は地域コミュニティが濃厚だということだろう。漁を中心に発展してきた町だから、コミュニティのつながり、結束力は緊密だった。しかし311によって大半の人が被災するという“共通体験”によって、「周りの人の力を借りなければ」という価値観が強まり、助け、助けられるという空気が地域のなかでより高まったという。
「水揚げ情報」は、漁を軸とした気仙沼だからこそのトップ記事。
気仙沼では前回書いた「気仙沼ピット」「気仙沼漁船サービス」という独創的なビジネスフローが構築されており、独自の地域経済がスピーディにまわるため、漁港に接岸される漁船情報に敏感である。国の情報や気仙沼市の予算記事よりも水揚げ情報がトップ記事として、気仙沼の読者の目につく場所に割りつけられている。
「漁業通信」もそう。これも三陸新報ならではの情報。
漁業無線局からの情報にて、漁船がどの海上で、どの港で、どうしているのかが一目でわかるようになっている。日々の通信情報は、漁船の家族がわかるだけではなく、気仙沼全体で「気仙沼」の漁船の動きを把握し、見守り、応援してこうとする体制が「水産都市」気仙沼たるゆえんと感じた。
「地域に密着する」とよくいうが、「三陸新報」の記事を読んで、「地域密着」のあり方が考えられたような気がする。
地域の地理特性、過去から現在につづく時間軸、地域ならではの必然性のある産業・商業が生み出され、その実現に向けて実践していくことが地域戦略ではないだろうか。そのうえで、地域の人々が役割分担をおこない、それぞれがそれぞれの役割を果たすことで、地域の価値が最大化していくことになるのではないだろうか。
日本中、超高齢社会である。
超高齢社会における地域コミュニティをどうつくるのか、つくりなおしていくべきなのかと、様々な場で話しあわれている。こういうことをしたら、よりよい地域コミュニティができるというものはないだろう。100の地域コミュニティがあれば、100のコミュニティ・デザインや方法論があるだろう。
しかしながら気仙沼における地元新聞の圧倒的地域支持の姿から地域に活力を与え強くするためには、地域の歴史と地理性、地域独自の産業と、家族と家族のつながり、世代間のつながりを地域コミュニティに重ねあわせ、状況変化にあわせて変えつづけることが大切であると学んだ。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 5月21日掲載分〕