これから大きく人口が減少すると、センセーショナルに先行き見通しが発表され、人口減少問題が国の重要テーマとなり、「地域創生」という言葉が急浮上した。
「地方創生」の議論が全国で進んでいる。
「①東京一極集中の是正、②地方の人口減少に歯止めをかけ日本全体の活力をあげること」を目的に、自治体に対して、「地方人口ビジョン」、それを実現する「まち、ひと、しごと創生総合戦略」策定づくりを求めている。
しかし、そもそも「創生」とは、生み出すこと、初めてつくることである。「地方創生」という言葉がよくわからない。しかも人口をKPIに据え、人口をいかに増やすかが目標となっていることに、やや違和感を覚える。人口は出口であり、結果論である。
巨大津波が311にまちを押し流した。
巨大な波に呑みこまれる名取市の写真は忘れられない。その自治体の幹部が「地方創生の議論で気になることがある。人口を増やすこと、人口が減ることを止めることが、まちの存在理由ではない。最終的に残るまちは、文化をもったまち、魅力を育てられるまちだ」と呟いた。「311から」を歩いてきた私の実感でもあった。
311からの震災復興は、都市・地域によって違う。
震災復興を「スポーツ選手の怪我の治し方」で考えるとわかりやすいと、その自治体の幹部は語った。
テニス、サッカー、ラグビー、野球、相撲など、スポーツをしている人が怪我をした。スポーツで怪我をしたといっても、スポーツの種目によって対処法はちがうし、怪我をした部位、症状によってもちがう。にもかかわらず、同じ治療法で臨むことが意外に多い。スポーツの種目の違いによって、肉体・筋肉の鍛え方はちがう。それぞれの種目によって治療法はちがう。またスポーツ選手が一流かそうでないかによって、快復状態がちがう。スポーツの一流選手は周囲から「早く治して復帰せよ」と激励されサポートを受け、もともと持っていたモチベーションが鼓舞され、現場第一線への復帰が早い。それと震災復興はよく似ている。
なるほどと思った。陸前高田市から名取市へ、北から南へと、様々な場所、建物、人々を訪ね歩いた。311から6年経ったが、阪神大震災以上の甚大な災害だったということ、大都市型災害ではないことを忘れてはならない。それぞれの地域の被災状況はそれぞれちがう。同じ考え方・手法で復興しようとすると、適合不全がおこるのではないだろうか?
むしろ、それぞれの地域の地形・地理上の特性、その地域ならではの産業・商業のありように、地域の歴史、地域文化とが掛け合わされることによって、地域が新たに目指していくべきことが明らかになり、それに向けて再起動していけるのではないだろうか。
地域の人たち自らができることと、他の地域・人々の協力を得て、それらをかさねあわせて進めていくこと。
それがこれまで以上に必要だと、「311から」を歩きつづけながら感じた。復旧でも復興でもない。むしろその地域が本来持っていた「本質」を掘り起こし、内から外から新たな知識・技術を集めて掛けあわせることで、新たな価値がうまれていくのではないだろうか。
今こそ復興支援ではなく、それぞれの地域で、私たちがなにをできるのかが求められている。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 5月25日掲載分〕