徳島の阿波踊りが盆踊りとは知らなかった。
太鼓がたたかれ歌が流れ、櫓を囲みぐるぐると踊りつづけるスタイルが盆踊りだとばかり思っていたが、アクティブで躍動的な阿波踊りや、一方静かで上品な越中八尾のおわら風の盆などの「流し踊り」も盆踊りだった。
江戸時代の書物(「難波鑑」)に大坂の町内を流し踊りしている男女の絵があったことを思い出した。越中八尾のおわら風の盆に似ている。この絵をじっとみると大坂は町人の町なのに刀をさしている男性もいて、踊りという場で武士と商人とが融合していたのではないだろうか?さらにある研究家から江戸時代の人は今以上踊ることが好きだったと聴いた。
ともあれ盆踊りの歴史は古い。
1000年以上も前の平安時代中期に生まれた。念仏を広めるために瓢箪をたたき念仏を唱え踊りだしたことから始まった。その後、“先祖を供養する”という盂蘭盆会に結びつき盆踊りは進化する。さらに鎌倉時代に一遍上人が民族芸能的要素を組み込んだ盆踊りをうみ出し、江戸時代になると人々の交流、男女の出会いの“場”という性格をもつ。盆踊りはお盆に戻ってきた先祖の霊を見送るためのもので、お盆の8月15日の晩から8月16日の朝まで踊りつづけていたようだ。江戸時代、あまりのブームとなり、風紀を乱すこともあった。その後明治に入り廃仏毀釈の政策からいったんすたれるが、大正末期に復活し100年近くとなる。
「ハワイにも盆踊りがある」
ハワイで画廊を経営している友人からお聴きした。「ハワイではBon Dance(ボンダンス)といって、6月から9月にかけて毎週どこかで開催している。櫓を囲んで踊るのは日本と同じスタイルで、どこの会場も盛り上がっている」
日本からハワイへの移民がそれぞれの出身地域ごとに集まるコミュニティをつくり、定期的に行事をおこない、つながった。その行事のひとつとして出身地の民謡にあわせて盆踊りがおこなわれた。それがハワイでのはじまりだった。
「すごい熱気ですよ。ここは日本かと思うくらい。日系人だけでなく、現地のアメリカ人も踊るんですよ。日本の人が忘れたような古い歌が歌われ、日本の歌と太鼓のリズムでアメリカ人も楽しそうに踊るんです。アメリカ人は盆踊りの先祖供養という意味はご存知ないかも知れないけれど、日本食や柔道だけでなく盆踊り文化も世界に広がっているんですよ」と友人は嬉しそうに笑った。
同じでありながら違いがあるのが「文化」。守・破・離が独創性を生む。
もともとはこれだったのだから、絶対にそれを守らなければならないということではない。過去にあったものごとの本質を掘りおこし、理解したうえで、現代という社会、技術・システムを加味して、今を生きる私たちにあった新たなものへと編集しなおしてこそ、成長がある。
しかしそこで、気になることがある。なぜ盆踊りは「輪」になって踊るのだろうか?
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 8月23日掲載分〕