CELの鈴木主席研究員の「御社の商品が売れない本当の理由」という新書が売れている。ハッと思わせるタイトルで目を惹きつけている。新書であるのに、345頁という重厚感あふれた本にお得感を覚えることもある。
本屋さんのなかには、「本当に使える」というメッセージを書いた手作りのPOPをたてていただき、PRしていただいている店もある。
「一生役立つ実践マーケティング」と著者が書いている。よって一生役立つので、決して簡単に読みきれる本ではない。しかし自らの経験、仕事と照らしあわせれば一生役立つ。マーケティングをおこなうなか、よく失敗する課題を5つに分け、考えていく構成になっている。
①「発想についての呪縛」を解く ☆初級
②「計画についての呪縛」を解く ☆初級
③「実践についての呪縛」を解く ☆☆中級
④「人間についての呪縛」を解く ☆☆☆上級
⑤「コミュニケーションについての呪縛」を解く ☆☆☆上級
マーケティングの誤解は、“「フレームワーク」や「公式」を使うと、マーケティングをやっている”と勘違いする人や会社があるが、決してそうではない。コンサルタントがSWOT分析などを伝家の宝刀のように使って得意気になっている姿を見かけるが、決してそうではない。マーケティングはものごとをどう見て、どう考え、どう発想して、どう試してみて、どうフィードバックをして、どう行動するかという極めて実践的、経験的なものである。この新書には様々なことに挑戦した人々の成功事例と失敗事例のストーリーが盛り込まれている。
ひとつの事例を紹介する、大阪ガス本社のビルの傍に実際にあった薬屋さんが今から200年前の1811年に薬を売り出した。「ウルユス」という名前の万能薬。薬の名前の由来は下剤としての効能によって腹内を空にすることから、漢字の「空」をウ・ル・ユの3つに分解し、動詞のスをつけたというブランド戦略をとった。ウルユスの主成分は漢方薬として使われる生薬の大黄だが、カタカナのオランダ語風のネーミングにすることで、舶来の効きそうな薬だとお客さまに受けとめられ爆発的に売れ、昭和初期まで100年も売れつづけた。〔新書P232〜233〕
実は「ハーゲンダッツ」もウルユスと同じブランド戦略をとった。アメリカ・ニューヨークの人がアイスクリームを売るにあたって、乳製品で知られるデンマークを連想させるネーミング(首都コペンハーゲンの「ハーゲン」)をとって、「高級アイスクリーム」の地位を獲得し、世界に広がった。1961年販売で50年を超えるロングセラーとなり、今も売れている。
このような理論と事例が盛り沢山の新書「御社の商品が売れない本当の理由」、ぜひお読みください。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 9月25日掲載分〕