御堂筋に銀杏が落ちる季節となった。銀杏特有の香りが漂うと同時に、一気に気温が下がり、街行く人々の服装が変わり、街の風景が一気に変わった。
弊研究所の鈴木隆研究員の新書「御社の商品が売れない本当の理由」が発売されて3週間。日経MJの書評欄「使える読書」(10月4日)に掲載いただいた。じっくりとお読みいただき、この本の読み方を含めた書評をいただいた。さらに別の新聞社からも取材が予定されている。店頭でPOPを書いていただく書店が増えている。ありがたい。
理論と実践とは、現場にとって本当に難しい。理論を勉強したので、学んだ「セオリー」で計画をたてて現場に発信する ─ うまくいくと思っていたらうまくいかない、なぜなのか? 一方、現場経験を積み、いままでずっとうまくいっていた。だから、これまでうまくいっていたので、今度も「これ」をしたらうまくいくと考えて実行してみたら、うまくいかなかった。そんな経験はいくらでもある。問題は、うまくいかなかったこと、失敗したことから学ばないこと。だから同じ失敗を繰り返す。
マーケティングとはMarket+ing。マーケットは常に動きつづけている。昨日、成功したことが今日、うまくいくとは限らない。マーケットが変わっているのに同じ打ち手でうまくいくとは限らない。しかし正確にいえば「マーケット」ではない、「人」である。「人」がどう感じ、どう思い、どう考えるのかをつかみ、「人」に応えるものをどう考え、どう提供できるかだ。
最近、「これからはデジタルマーケティングだ」ととなえる人が多い。そんな本がよく出される。「ネットだ、AIだ ─ これをやれば、うまくいくんだ」という人も多い。そもそもネットビジネスは隆盛だが、リアル店舗での売り上げから移転しただけで、セロサムゲームで、新たな需要を生んでいるわけではない。消費者がどちらを選択したかということだ。どちらが消費者、お客さまの心をどうつかんだかだ。
マーケティングに特効薬はない。マーケティングとは総合的にアプローチを“総動員”し、 ”実践”し、お客さまに一歩ずつ近づき、お客さまの心をつかむことである。鈴木隆研究員の「御社の商品が売れない本当の理由」は、そのことを理論と実践のなかでストラグルして書きつづけた本である。ぜひ3連休にお読みください。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 10月6日掲載分〕