「ローマ篇」
イタリアを歩いた。
ローマからシエナ、フィレンツェ、パルマ、ヴェネチア、ミラノと、イタリアを北上した。イタリアはひとつではない。イタリアがひとつの国になったのは、たかが約150年。古代ローマ前後から二千年以上の圧倒的な時間軸のなか、都市・地域が耕やされ、育まれ、つながりつづけてきた。イタリアの各都市を訪れ、その土地に立つと、いまも幾層も重ねられた記憶が現在と繋がっている。
たとえばイタリア料理。
各都市・地域によって、料理は変わる。言葉も都市・地域によって通じないことがあるという。都市・地域の地形、自然、歴史のちがいにより、 産業の形、住まう人たちの価値観、行動様式、ファッション、食文化などが異なる。イタリアはひとつでない。長い時間軸からいえば、ずっと別々の国だった。都市・地域文化の違いを感じながら、イタリアを歩いた。しかしEU統合でEUがひとつとなり、物流が統合されたことで、産業・経済・文化が変わりつつある。
何が変わり、何を守ろうとしているのか?
まずローマ郊外の朝から話をする。
農業体験ができる宿泊施設。二十数年前からローマ郊外で農業体験できる場所が増えている。大都会であるローマだが、様々な農業体験を家族で過ごせる。もともとはイタリア国内の人々がすごす場であったが、EU統合後はイタリア国内だけでなく、ドイツやフランスの家族たちも来られる。EUの方々がバカンスにイタリア南部に農業体験に来る。
農家レストランで、朝食した。イタリア人の朝は甘い。甘いパンとカフェオレで甘みをとり、一日の活力を得る。
朝の宿泊施設の担当は女性が朝食をもてなし、旅人を見送り、昼に学校から帰ってくる子どもたちと過ごす。男性は昼から活動を開始。旅人を迎えて、レストランの準備をする。家族で役割分担をおこない、家族全員で子どもを育てる。子どもを一人にしない。日本も昔、こうだった。
ローマからシエナ、フィレンツェに向かう。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)