「パルマ篇」
メルカートとは、イタリアの市場。イタリアの蚤の市・フリーマーケットは、洋服や生活用品、野菜や果物、食料品、アウトレット、書籍などの店が並ぶ。メルカートはイタリアの各都市で開かれ、地域の人が集まる。蚤の市ともフリーマーケットといえるが、使い古し、安物を売っているだけではない。ファッションブランド品や一流品が並んでいることもある。一流品の売れ残りが破格値でメルカートに並んでいることがある。そもそも日本のフリーマーケットとはコンセプトがちがう。イタリアのメルカートはイタリア各都市・各地域で日常的に開かれ、イタリア人の生活リズムのなかに組み込まれている。
地域のなかで経済が循環している。
日本は「新品のファッション店→アウトレット」で、商品、ビジネスの流れは止まるところが、イタリアでは「新品のファッション店→アウトレット→フリーマーケット」と地域のなかをモノがまわる。
パルマ市民の「市場」に寄ってみた。
世界三大ハムのひとつといわれるパルマハム(プロシュット・デイ・パルマ)がいたるところに並んでいる。市場は原色で明るく、衛生的で、バリエーション豊かで、見ているだけでワクワクする。肉屋も肉を売っているだけではなく、ハンドメイドのソーセージ、ハンバーグ、チーズと自店オリジナルの加工品を並べられている。市場には、店ごとのプライド、職人ごとのプライドが「自己主張」している。
そのあとバールに寄った。
イタリアといえばバール。日本の喫茶店やバーに似ているが、イタリア人が住み、働き、学ぶなかでのまちにおけるバールの位置づけがちがう。喫茶店、軽食店、酒場など様々な特徴のバールがある。バールはイタリアのまちのあちこちにあり、朝起きて、ちょっと美味しいコーヒーを飲みたい、ちょっと軽く食べたい、ディナーの前や後で、ちょっと飲みたい、そこで知り合いと語り合いたいという場である。その日の目的によって、過ごすバールを変える。バールは仲のよい人たちのたまり場で、コミュニティの場である。イタリアにおけるバールは都市・地域の「顔」である。北イタリアの上品な都市「パルマ」のまちには、上質なバールの時空間が似合っていた。
パルマをあとに、ヴェネツィアに向かう。
(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)
〔CELフェイスブック 1月30日掲載分〕