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2018年10月25日 by 池永 寛明

【起動篇】 しゃーないやんか台風やから。自分のことは自分でせなあかん。


知らんかった。だれが決めた。なぜ止めた。」─ 930日の台風24号接近に伴う東京での計画運休に対する東京の人たちの殺気だった声を聞いて、唖然とした。台風通過の翌朝、電車を待つ大行列をしている人々の映像を見て、“ないしたんや”と驚愕した。関東での計画運休は初めて、“平日の計画運休もありうる”とのJR東日本のコメントに、“えっ、関東ってまだしていなかったのか”、JR東日本はあたり前のことをいっているのに、“なんでや”と。


京阪神は同じ台風24号の接近を黙々と受け入れ、淡々と行動した。台風24号接近の予想時間を聴き、各社の動きはすばやかった。JR私鉄などの公共交通の計画運休。それを受けて百貨店、SCレジャー施設も、買い物客や従業員の安全を考慮し、終日の臨時休業のアナウンスを前日におこなった。前日からスーパーで非常食をはじめとする食事を淡々と買い求める人たち、住宅やビルでは屋根やシャッターなどの台風への備えを黙々としている人たち、5ヶ国語での台風情報を前日から流すFMCOCOLO駅は閑散、繁華街も静か。みんな黙々と、淡々と台風接近に備えていた。大阪北部地震や台風21号など、ここ何ヶ月かの災害での経験に学習し、復習し、台風24号を“想像”して予習をして、行動した。暴風雨だったが、とても冷静だった。翌日もスムーズだった。


日本人は「問題」と「課題」を混同しがちである。troubleproblemのちがいを何度かCOMEMOに書いているが、日本人はどうしても現象面にあらわれている問題「トラブル(trouble)」に目をとらわれ、トラブルをひきおこす本当の原因・課題(problem)に気づかない。表に出ているトラブルへの対応、モグラたたき、対症療法が中心で、本当に解決しなければならないことをしない、しようとしない、避けようとする。


たとえば頭が痛い→頭痛薬を飲むとする。なぜ頭が痛くなるのかという原因を確かめ、その原因をとりのぞこうとしない人が多いのと同じである。



今回の関東の台風に伴う「騒動」を見聞きし、「trouble」と「problem」の混同を想う。2011311日の「東日本大震災」や幾度の災害で経験したのに、またなぜこんなに混乱するのだろう。真の課題(problem)は生命を守ることにつきる。電車が止まったら困る、スーパーが閉まったら食べるものがなくなったら困る、会社に行けなくて困る、遅刻するじゃないか─ そんなトラブル(trouble)への対応はまさに対症療法、本末転倒である。


「分」を弁(わきま)えること(これも何度かCOMEMOに書いている)。台風は自然災害だから、しゃーない。かつて住宅には雨戸を早めに閉め、ガラス窓に木を打ちつけ、蝋燭や懐中電灯を用意して、外に出ないで家族がひとつの部屋に集まって、じっと待つ─ それが当たり前だったし、それは今も当たり前。台風の予測精度も格段と高まり、情報伝達も多層的におこなわれている現代は以前よりに台風に備える条件は高まっている。




猛烈な風、雨のなか、電車を動かせ、早くとめたら困る、台風すぎたら早く動かせ、スーパーはずっと開けとけ─ なんでもかんでも「要求」する。じゃ、あなたは自らの「分」を果たしているのか。「分」を弁えよ。


災害への備えは「自助→共助→公助」である。自分のことは自分でする。それで余裕があったら隣り近所、知り合いを助ける。そういった活動を公が援助するのが原理原則。これを「公助→共助→自助」と逆転して考える人が多い。役所はなにをしてくれるのか?自治会はなにをしてくれる?鉄道はなにをしてくれる?エネルギーは止まったらすぐ使えるようにしてくれる?という要求が高まる。


台風も地震も自然によるもの。自然はだれもコントロールできない。日本人はこれまで自然をあるがまま受け入れ、それに対処してきた。自らの生命は自らが守る、これがproblem(課題)であって、それをすることが「分」を果たすことである。分を弁えず、「だれかがやってくれる→だれかがしなければならない→だれかがしないのはけしからん」となる。「自助→共助→公助」が物の道理であり、決して「公助→共助→自助」ではない。


これは台風や地震だけではない。自分の分を果たさず自分のことを棚にあげて、なんでもかんでも他人に「要求」する。この要求は、いろいろなところでおこっている。どんどんその風潮が強まっている。自分は「分」を果たしているのか、分を弁える。自分のことは自分で守るのが自然の理ではないだろうか。


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  104掲載分

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