海外から輸入した貴重な資源で、海を直接温めている?
「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
こんにちは。エネルギー・文化研究所の前田です。
電気は、生活になくてはならないものです。テレビが灯油で映ることはありませんし、照明をローソクに変えるのも現実的ではありません。
では、その電気はどうやって生み出して(発電して)いるのでしょうか?
詳しくみてみたいと思います。
1.発電とは、強制的に回転させること!
発電といえば、昔の自転車にはタイヤの回転と連動して豆球が光るライトがついていました。
人力で発電するイメージとして、今でも自転車をこぐ姿が思い浮かびます。
そうです。発電機を回転せば、電気が発生するのです。
では、その回転を生み出す動力をどうしているのでしょうか?
電気の多くは、各地域にある電力会社によって大規模に発電され、それぞれの地域に住む私たちのもとへ届けられています。
(電力の販売が自由化され、供給する電力会社を選択できるようになっています)
大規模な発電所では、石油や石炭、天然ガスを燃やしたり、あるいは原子力を反応させたりしたエネルギーで回転する動力を得ています。
(風力発電や水力発電も、自然エネルギーを利用して、発電機を回しています)
もう少し詳しく説明しますと、石油や石炭を燃やして水を沸かし、蒸気を発生させます。その蒸気が膨張する力をつかって、タービンを回転させます。
原子力発電も、蒸気を発生させてタービンを回すという原理は同じです。
天然ガスは違います。天然ガスを燃やした際に排気ガスそのものが膨張する力を利用してタービンを回しています。
飛行機のジェットエンジンと同じ原理です。
いずれにしても、燃料のもつエネルギーを利用して回転力を得ています。
2.発電するエネルギーで、海を直接温めている!?
ここからが問題です。
燃料を燃やせば、排気ガスとして大気に余剰のエネルギーが放出されます。
また、蒸気が水に戻る圧力差も利用するため、復水器で海水と熱交換しています。
つまり、大気や海にエネルギーを捨てています。
これらを、発電ロス(損失)と呼びます。
では、いったいどれほどの熱を海や大気に捨てているのでしょうか?
最新式の発電所は効率が高くなっていますが、日本全国で平均すると、ざっくりいって半分の熱を海や大気に捨てています。
たとえば、原子力発電でみてみましょう。平均的な原発1基あたり1秒間に70トンの海水を7℃温めて放出しています。
と言われても、よくわかりませんので、河川と比較してみましょう。
日本で一番大きな湖といえば、琵琶湖です。
琵琶湖からは、瀬田川という一本の川だけが流れ出ています。
瀬田川は、やがて賀茂川や木津川と合流し、巨大な淀川となって大阪湾に流れていきます。
川を流れる水量は季節によって変動しますが、平均すると淀川の流量は1秒間に163トンです。
つまり、原発2基から3基あれば、淀川の水を7℃温めていることになります。
それも、24時間365日温め続けているわけです。
実際の発電所では、入念な検討のもと環境アセスを取得されていますので、環境への直接的な影響は軽微です。
しかし、海外から購入した貴重な燃料の半分をつかって、海や大気を直接温めていることに変わりはありません。
電気は生活必需品でもあり、つかいやすいエネルギーであることに違いありません。
しかし、その電気がどのように生み出されているのかまで知ることで、違った見方をすることができるようになります。
たとえば、太陽光発電パネルの設置は「外国から購入する燃料を、つかうエネルギーの2倍減らすことができる」ことになりますね。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。
次回をお楽しみに。