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2022年05月12日 by 遠座 俊明

長寿社会の歩き方 3/4


こんにちは。エネルギー・文化研究所(CEL)研究員の遠座(おんざ)俊明です。

エネルギー・文化研究所が発行する情報誌「CEL」130号(2022年3月発行)では、「長寿社会の歩き方」をテーマに、各界でご活躍の方々と対談、インタビューを行ったほか、論考も寄稿していただきました。

このコラムでは、これまで定年後問題や高齢社会を研究してきて得た、ロングランの人生を生きていくこと、世代を超えて役立つ“気づき”について4回に渡って考えていきます。

 

人が生きるためのエネルギーとは?・・・プチ就労事業での気づき (その1)


私は、地元宝塚市に提案し、自治体との共創によって「健康・生きがい就労トライアル」という80歳くらいになっても活動できる(働ける)仕組みを作っています。

これは、自分の定年後を考え、80歳くらいになっても地元にそのようなシステムがあり、活動できたらいいなと思っていたことによります。

若いころからいろいろとボランティア活動もしてきましたが、私のような人間は、気分が乗らなかったり、体調が今一つだとついボランティアの予定をキャンセルしてしまっていました。そこで、活動の継続を考えた場合、多額でなくてよいので何かしら経済的な評価もあった方が長続きすると考えたからです。お小遣い程度であっても経済的に評価されると嬉しいですし、お金をいただくことで、より責任感ややりがいが高まります。


◆健康のために働く


前回、「動かないから動けなくなる」という“生活不活発病”に 高齢期には 特に気をつける必要があると書きましたが、その対策として、この健康・生きがい就労トライアルは「健康のために、無理ない範囲で働く」ことをコンセプトにしています。70代以上の高齢者は14時間以上働くと疲れを感じると言われるので、2〜3時間×週2日程度のパートで働きます。

このような短時間パート就労の引き受けをお願いした業界は、慢性的な人手不足で困っている介護や保育の分野です。この業界なら働く側の都合を聞き入れてくれると思ったからです。介護や保育の事業所で、専門職でなくても誰でもできそうな周辺業務を高齢者就労のために切出してもらいました。


 




そして、働く側と雇う側のマッチングがすべてうまくいくとは限らないので、最初の3カ月はお試しとして3カ月のトライアル期間を設けることにしました。もちろんこの期間も最低賃金以上の時給が保障されています。

更に、高齢者は慎重な人も多いため、安心して参加できるよう”自治体の事業”として宝塚市健康福祉部から参加者募集をかけています。


◆動き出した高齢者たち


2019年に介護施設や保育所の協力を得て始めた高齢者の3カ月”健康・生きがい就労トライアル”事業には、75人(2019年度)の参加者がありました。

(保育所は1ヶ所5名のみの試験的実施)

今までいくら求人しても人が来なかった業界ですので、15人も集まれば”良し”としよう と考えていましたので、この予想をはるかに超える参加者の多さに市の職員も施設の方々も驚いていました。

更に3カ月のお試し(お見合い)就労トライアルを終えた時点で、別のことをやりたいなどを理由に終了された方もいましたが、以降もパートとして就労継続を選択された人が8割近くにのぼりました。

なぜたくさんの高齢者が参加し、今でも多くの方々がこの活動を継続されているのかは、参加者アンケートの記述を見ればよくわかります。


家でテレビばかり見てボーっとしていてもしょうがない。誰ともしゃべらない日もあり、これじゃいけないと思っていました。

生活のリズムができて、お小遣いも入り、充実した日々を過ごせています。

退職後はおよそ10年のブランクがあり、就業に少し不安があったので、良い機会でした。さらに職種が広がればうれしいです。

高齢になっても地域で就労・活躍できる機会を与えていただき、生きがいになっています。

職場の若いスタッフの手の回らなかったことや年の功で気づいたことなど、少しでもお手伝いができたことに満足感をおぼえ、喜んでいます。

定年まで生活のために働いてきましたが、このトライアルで働く楽しさを感じました。自分の体力に合う働き方で、仕事ってこんなに楽しかったんだと新発見。職場に行くのがワクワクです。



参加者の満足度調査では9割の方が満足と答え、「特に介護の仕事をしたくて参加したわけではなかったが、でもやってみて良かった。」という方々が多かったことに、人が役割を担うことの意味、「仕事」の持つ本来の意味、そして、失業することの意味を感じました。


(次回に続く・・・この連載は隔週でお届けする予定です)



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