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2022年05月25日 by 遠座 俊明

長寿社会の歩き方 4/4



こんにちは。エネルギー・文化研究所(CEL)研究員の遠座(おんざ)俊明です。
エネルギー・文化研究所が発行する情報誌「CEL」130号(2022年3月発行)では、「長寿社会の歩き方」をテーマに、各界でご活躍の方々と対談、インタビューを行ったほか、論考も寄稿していただきました。
このコラムでは、これまで定年後問題や高齢社会を研究してきて得た、ロングランの人生を生きていくこと、世代を超えて役立つ“気づき”について4回に渡って考えてきました。今回はその最終回です。

 


人が生きるためのエネルギーとは? プチ就労事業での気づき(その2)


前回紹介した宝塚市で行ったトライアル就労に参加された高齢者の方々の声を要約すると以下のようになります。

 ・時間をもっと有効に使いたい!
 ・前向きな自分を感じたい!
 ・人とつながり、周りから必要とされたい!
 ・何か役割を担い、生活を充実させたい!

また、マザーテレサは次のようなことを語っています。
「この世で最大の不幸は、戦争でも貧困でもありません。人から見放されて、自分は誰からも必要とされていないと感じることです。」

生きるうえでの“自己肯定感”“役割”の重要性

リタイア後に、役割やすることがなくなって、自己効力感や自己肯定感が失われ、自分が生きていることの価値、自分の存在理由がわからなくなるという心境に陥る人が少なくないようです。それでこの状況から何とか抜け出したいとの思いで、健康・生きがい就労トライアルに参加された方が多かったと考えています。
「特に介護の仕事をしたくて参加したわけではなかったが、でもやってみて良かった。」という言葉に、その心境が内包されています。

役割やすることが無くなり、生活が不活発化することは、高齢者の健康、そして自立生活の維持に非常に大きな影響を及ぼしていきます。動くことが少なくなると、だんだん動けなくなり、身体・生活の自立度が落ち、フレイル(虚弱)化し、要介護状態になっていくからです。

介護保険からの支出額は要介護者1人当たり年間200万円と言われています。これが私たちの介護保険料や税金から支出されています。さらに、社会保険の中で非常に大きな支出となっている高齢者医療費(保険)を考えると、高齢者が生きがいをもって活動し健康を維持することは、単に個人の幸せだけではなく、大きな社会的課題への取組みであることがわかります。 

自分の存在感を求めて人は動く

80歳くらいになっても健康のために無理なく働く“健康・生きがい就労トライアル”事業では、これまでいくら求人しても人が来なかった介護業界に多くの高齢者が参加されました。

なぜ、行政や業界が驚くほどの人が参加されたのかをまとめると次のようになります。

人は能動的に社会的役割を担うことで、自分の存在を自ら認めることができる。
他者から必要とされている感覚は重要で、自己効力感、自己肯定感、そして生きていることの確認は、生きるエネルギーや動く力を生み出し、生きている喜び、ひいては免疫力をも高める。

最近、老年学の分野で人の社会的活動や人との関わりがもつ健康、要介護や認知症予防の効果に関する研究が進んでいます。

NPOによる事業の地域的拡大の試み

高齢者が健康のために無理せずハタラク(働く・傍楽)仕組みづくりについてこれまで講演をさせていただく機会が幾度かありました。
その時、参加された現役世代の方々から、
「もっと早くにこの活動があれば、生活が不活発化し要介護になってしまった親を救えたのではないか」
「既に亡くなってしまったが、この活動に参加していれば母親の状況もだいぶ違ったものになっていただろう」などの感想をいただきました。

また、2020年11月には、国の「健康寿命をのばそうアワード」において宝塚市(地域福祉課)の健康・生きがい就労トライアル事業が、全国に広げるべきモデルであると厚生労働省老健局長優良賞を受賞しました【介護予防・高齢者生活支援分野】。

https://www.smartlife.mhlw.go.jp/award/09/ 

そのため、これまで得てきた研究・活動の知見を活かし、2021年4月にNPO法人健康生きがい就労ラボを立ち上げ、現在、大阪府内の複数の自治体からの依頼で本事業を進めるサポートをしています。20代、30代の有志の方々にもこのNPOの理事として活躍していただいています。

https://lifespiceworks.com

マネジメントの父と呼ばれるドラッカーは“21世紀はNPOの時代”だと言っています。人が志をもつことにより持っている力・強味が発揮され、社会を変えていくことができる。21世紀を予見し、あるべき社会を示した言葉です。

能動的に社会的役割を担うことで、人は自分の存在感を強く感じることができ、自己効力感や自己肯定感を高め、ウェルビーイング(幸福感)を向上させていくことができると考えています。



(本連載はこれで終わりです。ありがとうございました)





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