こんにちは。エネルギー・文化研究所の熊走(くまはしり)珠美です。
私は2016年から、研究所が発行する情報誌『CEL』の編集を担当しています。
今回は、この冊子について、皆さんにご紹介したいと思います。
◆バブル景気直前に創刊した企業広報誌
エネルギー・文化研究所(Research Institute for Culture, Energy and Life:通称CEL)は、大阪ガス株式会社の創業80年記念事業のひとつとして、1986年(昭和61年)4月に設立されました。最近、36年ぶりの続編が話題となっている映画『トップ・ガン』が公開された年です。情報誌『CEL』(当時は季刊誌『CEL』)は、その翌年の1987年2月に創刊しました。
時はまさにバブル景気が始まる直前。日本でも、企業フィランソロピーや企業メセナといった社会貢献活動が盛んになっていき、「企業メセナ協議会」が発足した1990年は「フィランソロピー元年」と呼ばれました。この時期、多くの日本企業が企業内研究所や財団を開設し、また、企業広報誌を創刊しました。
それから、35年。残念ながら、企業内研究所の多くは姿を消し、企業広報誌も廃刊・休刊になりましたが、おかげさまで、『CEL』は現在も続いており、今年の3月には130号を発行しました。
『CEL』のバックナンバーは、研究所のホームページで閲覧していただくことができます。古い号は目次の掲載のみですが、68号から最新号までは、PDFで全ページをご覧いただけます。
【CELバンクナンバーのURL】https://www.og-cel.jp/issue/cel/index.html
◆創刊号の特集テーマは「火」
1987年の創刊時、『CEL』の編集にあたっては、「絶えず社会に対して一歩先からの視点を提供できることを目指す」とあります。当時は年4回発行の季刊誌でしたが、特集テーマは創刊号から4回シリーズで、「火」「水」「土」「気」。このテーマ名を見ただけでも、当時の編集者の意気込みが感じられます。創刊号「火」の目次を見ると、人類学者の石毛直道氏と倉光弘巳(当時の研究所)所長の巻頭対談から始まり、錚々たる方々のお名前が並んでいます。
私が大阪ガスに入社したのはその翌年ですが、『CEL』は社内の人間も一目置く、格調高く教養にあふれた冊子で、新入社員の私などおいそれと手にすることができない憧れの存在だったことをよく覚えています。
◆最新号のテーマは「長寿社会」
その後、『CEL』は時代の変遷とともに何度かリニューアルを行い、現在の形になりました。ひとことで言うと、かつての「かなり手の届かない教養重視の冊子」から、「世の中の関心事を独自の視点で紹介する冊子」に変わったのではないかと思います。とは言うものの、今でも「ちょっと難しい」「内容がかたい」と言われることもよくあります。毎号テーマを決めて、その分野の専門家にインタビューしたり、有識者に論考を寄稿していただくため、専門的、かつ、読むのに骨が折れるページもあります。しかし、仕事で忙しいビジネスマンの方々が、日常生活で得られる知識や情報とは少し異なるものを、研究所が目指す「生活者の視点」でお届けできればと考えて制作しています。
編集で一番苦労するのは、特集テーマを決めることです。時代に即した、読者の方々に関心をもっていただけるテーマを設定するために、毎号、研究所のメンバーと制作会社(現在は、平凡社)の皆さんと議論を重ねています。
最新号である130号(2022年3月発行)のテーマは、「長寿社会の歩き方」。高齢社会について特集する冊子はたくさんありますので、『CEL』ならではの視点で誌面展開を行うことを心掛けました。巻頭では、社会学者の上野千鶴子先生にご登壇いただき、高齢社会の研究を行う遠座(おんざ)俊明研究員と対談していただきました。「“その先”の人生を、どう生きるか −『人生複線化』と『選択縁』」と題して、長寿社会の後半人生をいかに生き抜くかについて、時にはユーモアも交えながら、鋭い提言をいただくことができました。
【CEL130号のURL】https://www.og-cel.jp/issue/cel/1303462_16027.html
◆年2回発行、電子ブックでも読んでいただけます
情報誌『CEL』は昨年度まで年3回発行していましたが、今年度からは年2回(9月、3月)の発行となります。現在、9月発行の131号(仮題:持続可能な社会とは)の取材の真っ最中です。『CEL』の冊子は、自治体や企業、図書館、大学関係者などに寄贈しています。最近は、冊子ではなく、ホームページに掲載した電子ブックで読んでいただく方も多いようです。このコラムの読者の方々にも、ぜひ一度、読んでいただきたいです。
先日、映画『トップガン マーヴェリック』を観に行きましたが、前作を上回る素晴らしい内容で、36年経っても変わらず活躍するトム・クルーズに大いに元気づけられました。
同じ年齢の情報誌『CEL』も、皆さまのお役に立てる冊子であり続けることを目指して、編集を行っていきたいと思います。