世界のエネルギー事情 イギリスはCO2削減の優等生!?
「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
日本と同じ島国でもあるイギリスをみてみたいと思います。
1.かつてのイギリスは、石炭王国だった!
もともと、イギリスの主力エネルギーとして、長らく石炭が占めていました。
それもそのはず、イギリスで蒸気機関が発明され産業革命が成立したのも、国内で石炭が豊富に採れたためです。
当時のイギリスが石炭を推し進めたのには、理由があります。
石炭の前は、当然、木材がエネルギー源でした。緯度が高く森林の再生が早いとは言えない土地柄で、木材資源の枯渇による木炭価格の高騰が起きたのです。
木炭から石炭への転換は、エネルギーの一大革命となりました
やがて、アメリカで石油が発見され、世界のエネルギーは石油に代替されはじめます。
しかしイギリスでは、国内で安価な石炭が豊富に安定して掘削できることから、石炭産業が国力の源として栄え続けました。
このような状況下で、なんと、イギリスは国策として石炭の段階的廃止を決めたのです。
時代は、日本がバブルに突入しようとしていた頃でした。
強制的な変革は数万人規模のストライキやデモを誘発し、1万人を超える逮捕者を出しながらも、鉄の女サッチャーは改革を断行します。当時のイギリス映画には、こうした世相が反映されているものが多くあります。
今も2024年の石炭全廃にむけて、着々と石炭から天然ガスに切り替わっています。
しかし、当時のイギリスは国内で豊富に採れる石炭を捨ててまで、なぜ天然ガスに変えていこうと決めたのでしょうか?
理由はふたつ。
北海で自国産エネルギーとなる油田・天然ガス田が発見され、増産の見込みがたったこと。
そして、労働集約的な石炭産業から脱却し、さらには製造業から金融業への雇用の移動を国あげて推進したことが挙げられます。
未来に向かって確固たるビジョンをもち、ブレることのない改革を断行したのです。
同じ時代の日本では、日米構造協議と称してアメリカから内需拡大を要請され、多額の資金をITなどの新たなビジネス育成に向けるのではなく、地方の道路敷設などの公共工事に費やしていました。
2.こうしてイギリスは、低炭素化の優等生となった
イギリスは、原子力発電の旗を降ろしていません。
近年も、新増設される原発に中国企業が参加表明したなどのニュースが飛び交っています。
イギリスの電源構成の推移 出展)資源エネルギー庁
そして、主力のエネルギー源が石炭から二酸化炭素の排出が少ない天然ガスに切り替わりつつある。
こうして低炭素化が一気に進んできたのです。
しかし、北海で産出される天然ガスにいつまでも頼る選択をとっておりません。北海は強い偏西風が一年中吹き、しかも遠浅の海という風力発電の設置に恵まれた地理条件です。
そこで、洋上風力発電も同時に拡大させてきたのです。
出展)Global Solor Atras
その結果、原発と再生可能エネルギーという二酸化炭素を排出しない電源が発電の半分を占め、残りの半分もクリーンな天然ガスが占めるという、世界屈指の低炭素化が実現しているのです。
化石燃料による発電が8割を超え、しかも石炭発電も多くある日本とは大きな違いです。
(個人的には、多様性をもったエネルギー構成のなかで、全包囲網的に努力することが日本の生き残る道だと考えています)
もちろん、そのイギリスも脱炭素の実現には、さらなる対策が必要になってきますが、現状は世界のトップを競って走っているといっても過言ではないでしょう。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。