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2022年09月22日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話13 再エネ先進国は、どこの国?

世界のエネルギー事情 再エネ先進国は、どこの国?


 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 脱炭素化が叫ばれるなか、世界のエネルギー事情はどうなっているのでしょうか?

 再生可能エネルギーの導入状況について、国際比較をしてみたいと思います。

 

 

1.再エネをもっとも多く導入している国は、どこでしょう?

 

 表題のような質問をすると、よく聞く答えが「ドイツ」です。環境先進国というイメージが定着している結果なのでしょう。

(下に添付しているグラフが答えですので、見ないで考えてくださいね)

 でも、ドイツではありません。

 すると、つぎに出てくるのが、悩んだ末に「イギリス」。北海に大量に導入されている洋上風力の写真が頭に浮かんだのかもしれません。

 でも、1位はイギリスでもありません。ここで、みなさんは答えに窮してしまいます。

 

 正解は、断トツ1位の中国なんです。そして、2位がアメリカ。

 日本は6位ですので、よくも悪くもないといったところでしょうか。しかし、3位以下はドングリの背比べのような状態ですので、比較するほどのものでもありません。

 

 この比較は再エネ導入の絶対量ですので、人口が多い国のほうが上位になりやすくなります。たしかに、人口で割ると中国は1位ではなくなります。

 しかし、中国と同じく10億人以上の人口を有するインドと比較しても、中国の導入量は際立っています。アメリカも日本の2.5倍以上の人口を有していますが、その比率以上に再エネを導入しています。また、日本より人口の少ないドイツやノルウェーの躍進も、特筆すべきです。

 

       

      資源エネルギー庁出展に筆者加筆



 この質問で判断に迷われたのは、再エネと聞けば、どうしても太陽光や風力が先に頭に浮かんでしまうからなのでしょう。

 しかし、日本も含めて、世界の再エネの主力は水力発電なんです。以前のコラム『エネルギーよもやま話2』でも触れましたが、ヒマラヤ山脈やロッキー山脈、そして北欧やロシアの氷河から流れ出る雪解け水が豊富にあります。それを利用した水力発電は、日本のものとは比較にならないほど巨大な規模になっているのですね。

 

 

2.日本に求められる太陽光パネルの性能とは?

 

 グラフの一番下にあるオレンジ色の太陽光。ここだけを取り出して拡大すると、つぎのようになります。




 中国とアメリカの順位は変わりませんが、日本が3位に浮上します。これを人口で割ると、つまり国民一人当たりの太陽光導入量は、1位がドイツで2位が日本になります。そして、国土の平地面積で割ると、日本が1位になります。が、この比較はなんの意味ももちません()

 ただ、太陽光に限って言えば、日本もかなり努力していることが伺い知れます。


 それもそのはず、日本はオイルショック後に進められたサンシャイン計画によって、太陽光や太陽熱、地熱、石炭ガス化、水素などの新エネルギーの技術開発に邁進し、太陽光パネルにおいては日本企業が世界のトップに君臨していた時代がありました。

 ところが、その後ドイツが国をあげての普及拡大政策を策定し、そこへ中国企業が入り込んだため、太陽光パネルの勢力地図が一気に塗り替えられたのです。


 当時の日本メーカーは、面積当たりの発電効率の向上に腐心していました。一方の中国メーカーは、効率よりも価格の安さを重視した戦略をとったのです。広大な敷地にパネルを敷き詰めるメガソーラーには、低価格がもっとも重要だったのです。

 中国メーカーが安く大量に製造できるようになった理由には、日本やドイツ企業のパネル製造装置が中国に多く輸出されたことが背景にあります。もちろん、メーカーは生き残りをかけた国際戦略を実行しているのであって、国としての一貫した政策の有無がこうした結果につながったのかもしれません。


 では、これからの日本はどうすればよいのでしょうか?

 日本には、砂漠地帯のようにメガソーラーを敷き詰める場所がありません。森の木を切ってまで山の斜面にパネルを敷くのは、限度があります。パネルの洋上設置もあり得ますが、漁業との関係や台風などの災害対策を考えると、ハードルは高い。

 これからの日本では、安かろう悪かろうのパネルを大量に敷き詰める発想ではなく、単位面積当たりの発電効率を高め、耐久性があり、そして撤去時のリサイクルが容易な構造といった日本企業ならではのきめ細かな対応が要求される時代に戻っていくのではないでしょうか。


 エネルギー資源を海外からの輸入に頼っていた代わりに、再生可能エネルギーに変えていく。しかし、その再エネ装置はすべて海外製に頼っている。どこか矛盾している気がします。

 資源貧国である日本。そこを変えることができないのであれば、技術だけは誰にも負けないものをもち、その技術をもとに、国を挙げて諸外国と友好な関係を構築していく。

 このような大局的な発想が日本国として求められる時代になっていくのでしょう。


 このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。


 








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