エネルギーよもやま話14 FIT制度の功罪を考えてみよう!
「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
再生可能エネルギーを普及させる目的で、FIT制度が施行されてきました。
ものごとには良い点もあれば、改善すべき点もあることが世の常です。そこで、FIT制度の功罪について、改めて考えてみたいと思います。
1.FIT制度のおかげで、再エネの導入が進みました!
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、普及が進みました。
前回のコラムで「日本の太陽光発電の導入量は世界3位」とお話ししましたが、そこまで伸びた最大の理由が、このFIT制度にあったと言っても過言ではないでしょう。
出典)資源エネルギー庁
再エネ電気の買い取りに要する費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によってまかなわれます。再エネ賦課金は、毎月の電気料金とあわせて自動的に支払われています。
再エネ賦課金の額は年々上昇していますが、現在は1kWh当たり3.45円となっています。
こうして集められたおカネによって再エネの導入が進められているわけですから、効果のある集金方法だと言えるでしょう。
みなさんも一度、ご自宅の電力料金の明細をご覧になってみてください。
出典)資源エネルギー庁
2.FIT制度の改善点を考えてみよう!
FIT制度のおかげで再エネ導入が進んだ。
これが正しい認識ですし、FIT制度そのものを否定するつもりはありませんが、さらなる発展のために、あえて改善点を考えてみたいと思います。
(現在はFIP制度に移行していますが、再エネ賦課金という徴収制そのものを議論したいと思います)
まずは金額の規模感をみてみましょう。
現在の1kWh当たり3.45円ですが、そもそもの電気代が1kWh当たり30円前後程度とすると、電気代の1割以上が追加で徴収されていることになります。そこそこの負担額ですね。
つぎに、ほかの燃料と比較してみます。
ロシアによるウクライナ侵攻以来、ガソリン価格が上昇していますが、激変緩和措置として政府からガソリン補助金(燃料油価格激変緩和補助金)が投入されています。今年1月に1?当たり5円からスタートし、4月には25円補助から最大35円に引き上げられました(予算の関係から、今後は段階的な引き下げが検討されています)。
電気1kWhの熱量(3.6MJ)をガソリン1リットル(33.36MJ)に換算してみると、再エネ賦課金はガソリンでは約32円に相当することになります。
ガソリンの高騰に対して25円とか35円を補助しながら、一方の電気で同程度の賦課金を全世帯から徴収している。これがFIT制度なんですね。
ここで、「全世帯から徴収」の部分に着目してみたいと思います。
ガソリンは、輸送や移動を生業とされている方々にとっては死活問題ですが、一般家庭においては贅沢品という一面もあります。公共交通機関が近くにあるにもかかわらず自家用車で移動したり、レジャーに出かけたりすることは、生活に必須とは言い難い。しかし、ガソリン補助はそうした贅沢用途にも適用されます。
一方で、再エネ賦課金は全世帯から、すなわち年金生活者や貧困家庭からも等しく徴収されます。消費税も同じように等しく徴収されますが、富裕層が購入する高額な贅沢品にも適用されます。しかし、基本的に電気は生活必需品なので、低所得者の負担割合は大きくなってしまいます。
しかも、集めた再エネ賦課金を受け取る人の多くは、基本的に資産をもつ富裕層です。広い土地を有している人、大きな屋根がある建築物を有している人、かつ発電事業を営む経済力のある人たちです。
低所得者からも一律で集めた資金を比較的資産をもつ人たちに渡すことで、新たな事業に取り組んでいただく。これって、「成長と分配」ではなく「集約による成長」ですね。
これがFIT制度の抱える根本的な課題(改善点)なのかもしれません。
もちろん、再エネ賦課金のような制度は、再エネの普及には必要不可欠なものです。現実に普及拡大してきた実績もあり、過去の方策について決して否定するものではありません。
しかし、これからも同じやり方を続けることは避けるべきでしょう。
たとえば、電力使用量の少ないご家庭は徴収対象から外したり、電気を使えば使うほど高額になる累進性をもたせたりと、セーフティネットや分配に対する工夫しろはあると思います。
社会のさらなる発展のためには、良い点を評価しつつも改善点にキチンと向き合う姿勢も大事ですね。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。