大阪ガスネットワーク

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ

CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

  • DaigasGroup

JP/EN

Home>コラム

コラム

コラム一覧へ

2022年11月17日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話17 「日本は省エネが進んでいる」は、本当でしょうか?

「日本は省エネが進んでいる」は、本当でしょうか?


 


「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

日本の、とくに産業界は省エネルギー対策が進んでいるといった認識が、一般的にあるのではないでしょうか?

省エネ先進国、日本。その認識は正しいと私も感じています。しかし、それをどこまで信じ切っていいものか、少し立ち止まって考えてみたいと思います。

 

 

1. オイルショックが日本経済を躍進させた!?

 

1960年代は、日本の「高度経済成長時代のはじまり」と評されています。

そうしたなか、1970年代に二度のオイルショックが起こります。原油価格が跳ね上がり、そのほとんどを輸入に頼っている日本の成長は終わった、とも言われました。

 

しかし、実態はそうはなりませんでした。日本は世界に類を見ない省エネルギー技術を開発して実装し、オイルショックを見事に乗り切ったのです。

原油価格の高騰は、欧米先進国にも等しく起こりました。当時の先進国のほとんどは自国で十分な石油が採れず、日本と同じように、おもに中東産油国からの輸入に頼っていたからです。

一方で、省エネを実現させた日本の競合力が相対的に上がり、加工貿易による輸出をますます増大させていったのです。

 

日本のおもな輸出相手国でもあったアメリカは慌てます。

1985年、双子の赤字を解消させるためにプラザ合意を無理やり日本に呑ませ、強制的に円高へ振らせます。それでも日本の躍進が留まることはなく、さらには日米構造協議によって、日本の内需を拡大させるための巨額の財政投入を約束させます。

巨額の資金がITなど新規産業の開拓に活用されれば良かったのですが、そうはなりませんでした。公共事業に巨額の予算が組まれ、回りまわったおカネが株や土地に向かいます。

そうして日本はバブルへ突き進み、やがてバブルがはじけて「失われた30年」に突入したのです。

 

しかし、失われた30年と言われながらも、日本の勤勉な就業者たちは草の根活動ともいえる小さな省エネ改善を現場から立ち上げて実現させ、その成果をコツコツと積み上げていきます。

 

 

2.「日本のエネルギー効率が大きく改善している」理由とは?

 

資源エネルギー庁が発行している『エネルギー白書』に毎年、掲載されているグラフがあります。

本文には、「日本のエネルギー効率(GDP1単位を生み出すために必要な 一次エネルギー供給量)は、1973年度の70PJ /兆円から、2020 年度には34PJ/兆円に半減するなど、大きく改善しています (第211-1-2)」とあります。

 

確かに、オイルショックの時期だけでなく、近年でもエネルギー効率を表す線がコンスタントに下がっていますね。

 

 

 

ここで「おやっ?」と気づきました。

2010年頃のエネルギー効率が、ぴょこっと上がっています。

そこで、右肩上がりの実質GDPの線を見てみると、その少し前にガクッと下がっています。2008年にエネルギー価格が歴史的な高騰を記録し、続く2009年にリーマンショックが起こりました。ちょうどその時期です。

 

リーマンショックでは、日本の製造業が大打撃を受けました。業種によって差はありますが、生産量が前年同月比80%減になる異常な事態も起こりました。

生産量が激減した場合、エネルギー効率は極端に悪化します。たとえ処理量が減ったとしても、納期を守るためには、工業炉などの生産設備を加熱したりして動かしたりして、少ない生産量でも処理をし続けなければならないからです。

 

グラフでも、エネルギー効率の線は短期的に上がっています。リーマンショックという未曽有の事態によって、生産効率が悪化してしまったのです。

 

一方で、近年のエネルギー効率は下がり続けています。その下がり方は、リーマンショック時の短期上昇とは比較にならない大きさの下降勾配です。

ちなみに、1985年頃から2005年頃までの約20年間は、ほとんど横ばい状態です。バブル好景気の時代を含んでいるにも関わらず、エネルギー効率はさほど変化していません。

 

では、2005年頃から急激に省エネルギー対策が進んだのでしょうか?

私自身も生産工場の省エネに携わってきた人間ですので、産業界あげて省エネに取り組まれてきたことは、肌で感じています。しかし、2005年頃を境になにかが大きく変わった印象はありません。

 

もしかすると、省エネとは別の要因が起こりつつあり、そのことがエネルギー効率の線が下降することに拍車をかけているのではないでしょうか?

もちろん、エネルギー効率とは省エネルギー対策のことだけを指しているわけでありません。『エネルギー白書』でも、エネルギー効率とは「GDP1単位を生み出すために必要な一次エネルギー供給量」と定義しています。

しかし、エネルギー効率が改善していることが、日本にとってどのような意味があるのか。省エネ活動のおかげと誤解して、大事ななにかを見落としてはいないか。

次回のコラムでは、その「大事ななにか」を追いかけてみたいと思います。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。

 

  • U−CoRo
  • 語りべシアター
  • 都市魅力研究室
  • OMS戯曲賞
Informational Magazine CEL

情報誌CEL

【特集】場づくりのその先へ −つながりから社会を変えていく

近年、まちづくりにおいて「場づくり」が注目されています。 その試みは、時に単なる...

バックナンバーを見る
  • 論文・レポート・キーワード検索
  • 書籍・出版
  • 都市魅力研究室
  • FACEBOOK

大阪ガスネットワーク(株)
CEL エネルギー・文化研究所

〒541-0046
大阪市中央区平野町4丁目1番2号

アクセス