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2022年11月24日 by 金澤 成子

今どきの出産・育児事情【出産・育休期】



こんにちは。エネルギー・文化研究所長の金澤成子です。


エネルギー・文化研究所は、深刻化する少子化問題を受け、働きながら出産・育児をする女性たちの本音を探り、新たな課題を発見するため、昨年夏に「新米ママラボ」を立ち上げました(※1)。マタニティ期〜出産・育休期〜復職に至る期間での調査(※2)をもとに、その課題と未来について考察していきます。今回は、出産・育休期を中心にご報告させて頂きます。

 

※1女の欲望ラボ(山本貴代代表)と共同発足

※2アンケート調査:新米ママラボ会員22人(30代中心)、2021年12月、2022年11月

 

1.育児・介護休業法改正で、「パタハラ」もなくなる?


今年4月に、事業主である企業に対して、男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化など、育児・介護休業法が改正され、3段階(20224月、10月、20231)で施行されます。


<産後パパ育休(出生時育児休業)の創設と育児休業の分割取得>


これまでの男性の育児休暇取得の実態はというと、内閣府の調査で、「1か月以上の育児休暇を取得しない理由」の、第1位は「職場に迷惑をかけたくないため」で第3位は「職場が、男性の育休取得を認めない雰囲気であるため」となっています。


内閣府「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査」2021年5月実施(20代、30代男性)より


また、厚生労働省が実施した調査(※1)では、「過去5年間に勤務先で、育児休業等に関するハラスメントまたは不利益取扱いを受けたことがあるか」という質問では、回答した男性労働者500名のうち26.2%、およそ4人に1人が受けたことがあると回答しました。また受けたハラスメントの内容では、「上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」「昇進、昇格の人事考課における不利益な評価」「上司による、解雇その他不利益な取扱いの示唆」などの上司からのハラスメントが上位を占めています。このように男性社員に対して、育児休業を取得しようとする場合に評価を不当に低くしたり、育児休業を取得しないように圧力をかける「パタ二ティハラスメント(パタハラ)」がなくならない限り、男性の育児休業取得率の向上は期待できないのではないでしょうか。パタハラが会社の負の雰囲気を生み出し、その雰囲気が更なるパタハラを助長する負のスパイラルが生み出されることも、懸念されます。


これまでも制度はありながらも、なかなか取得が進まなかった現状が、今回の改正によって、少しでも負のスパイラルから脱出し、取得しやすい環境に改善されればと思います。


(※1)東京海上日動リスクコンサルティング株式会社「令和2年度厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(2022年8月7日閲覧)


https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000783140.pdf


 2.育休といいつつも育児業、転職検討期?


前回のコラムでは、働く女性が、ストレスフリーで前向きなマタニティ期を過ごすためにも、妊娠初期から、オープンに、「妊娠」や「体調不良」を言い出しやすい職場の「環境づくり」の工夫が必要と報告しました。出産後、育児休業中は、職場との接点も少なくなり、自分の時間もなくなり、育児に追われる毎日で、休業といいつつも「育児」という仕事があり、つまり「休」がないのが実態です。孤立しがちな育休期を、地域の育児サークルや定期的な職場面談などで、少しでも社会との接点を持ち続けることで、不安やストレスから解放されるのかもしれません。「新米ママラボ」の調査では、約68%の新米ママから、転職や退職を考えたことがあるという結果からも、想定以上の育児の大変さから、今の職場で働き続けることへの不安もあるのかと思います。約30年前に育児休業を取得した私の場合は、育児休業制度ができたばかりで、育休中は、育児休業給付金や社会保険免除もなかった時代でした。女性は就職難でもあり、転職など選択肢にあるわけがなく、今のようなPCやメール環境もなかったので、復職後の不安から、スムーズなキャッチアップのため、育休中も定期的に職場から月次報告を郵送してもらっていました。今は、人手不足から、「育児」しながらでも働きやすい職場をアピールする企業も増え、ワーキングマザー支援に特化した就職のためのエージェントも増えてきています。復職を条件に育児休業を取得する中、復職後の転職を視野に、育休中に資格取得をする女性も増えてくるのではないでしょうか。ややもすると育休期は転職検討期でもあり、企業側も、育休中の従業員を、職場で働く従業員以上にケアする必要が出てきそうです。


3.「イクメン」も死語になるワークライフバランスを


政府は2025年までに、男性の育休取得率30%を目標に掲げています。この目標を達成するには、育児は男性もすることを当たり前の社会にしなければならないわけで、育児をする男性のことを称賛する「イクメン」という言葉も、褒め言葉として使われている間は、育児を行う男性が少数であることを意味し、「イクメン」もいずれは死語にならないといけないのかもしれません。諸外国の男性の育児休業取得率(※2)を見たときに、とくにその率が高いのが北欧諸国であり、ノルウェーの育休取得率は2012年の時点で90%、またスウェーデンは2013年の時点で88.3%と、大きく日本を上回っています。スウェーデンでは夫婦で480日分(16ヶ月)の育休取得が可能で、そのうち384日は子どもが4歳に達するまで、残りの96日は子どもが12歳に達するまでの期間で、一定の割合に基づき好きなタイミングで取得可能となっています。また、そのうち90日間は必ず父親が取得するように決まっていて、父親が育休を取得しないと夫婦で取得可能な育休取得日数が減ってしまい、損する仕組みになっていて、「パパ・クオータ制」と呼ばれています。「ハ?ハ?・クオータ制」は、1993年にノルウェーが初めて導入し、それによってノルウェーの育休取得率が当初4%だったところから、大きく向上したことがわかります。


新米ママラボの調査から、育児に積極的にかかわる夫の様子はうかがえるのですが、新米ママからは、夫が時々手伝うだけでは「育児の仕方がわからず」でやや不満の声が聞こえてきています。夫の育児が上達するには、育休がもっと柔軟(育休分割上限回数をなくすなど)、あるいは「義務化」までいけば、職場に気を遣わず、取得できるのかもしれません。前回の報告で、「育児」は「育自」としたように、男性の育児を「育自=成長」として考え、それを支援する企業が増えていけば、「育児=女性がするもの」というアンコンシャスバイアスもいつかは払拭され、男性も女性もワークライフバランスを自由に選択できる社会へとつながるのではないでしょうか。育児休業制度の改正によって、会社の雰囲気だけでなく、社会全体の認識も育児休業取得に前向きに変化し、社会全体で育児を支援していけるようになることに期待したいと思います。


(※2)独立行政法人労働政策研究・研修機構 資料シリーズNo.186「ヨーロッパの育児・介護休業制度」https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2017/186.html


 
なお、今回の報告の続きは、情報誌「CEL132(20233月発行)の「未来ブラリ」でもご報告させて頂きます。過去の「未来ブラリ」も様々なテーマでレポートしていますので、ぜひご覧ください。

 

【CEL131号のURL】


未来ブラリ 6 働くママの未来を考える。新米ママラボ発足!!/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】 (og-cel.jp)


【CEL130号のURL】


未来ブラリ 第5回 人生100年時代、どう生きる?/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】 (og-cel.jp)


【CEL129号のURL】


未来ブラリ 4回 スマホとの蜜月関係を探る/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】 (og-cel.jp)


【CEL128号のURL】


未来ブラリ 3回 コロナ禍、住まいは空母化する?/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】 (og-cel.jp)


【CEL127号のURL】


未来ブラリ 2回 食と人間関係 コロナ禍の新ルール/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】(og-cel.jp)


【CEL126号のURL】


未来ブラリ 1回 変わるオシャレ欲/CEL【大阪ガスネットワーク株式会社 エネルギー・文化研究所】 (og-cel.jp)




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