「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
脱炭素が叫ばれて久しいですが、さまざまな手法が玉石混在しています。なにを一番優先すべきなのかなども含めて、全体像について少し整理をしてみたいと思います。
1.脱炭素の実現までのタイムラグをどうするか?
脱炭素に向けて、さまざまな手法が進められています。再生可能エネルギーを増やそう、電化を進めよう、蓄電池を導入しよう、水素の利用を考えよう、送電線網を強化しよう、VPP(仮想発電所)を実現させよう、などなど。
こうした手法のどれにも共通する事実があります。
それは、どれも単独で成り立つものではなく、かつ実現(大量普及)までには相当の時間を要する、というものです。
たとえば、どれだけ電化を進めても、電化のスピードに再エネや原発の増強が追いつかなければ、化石燃料による火力発電を増やすことになります。火力発電にかかる発電ロスを考えると、場合によっては二酸化炭素の排出が増えてしまいます。
一気に理想状態へもっていくことができない限り、過渡期をどうするかという問題はいつもつきまとってきます。
そこで出てくるのが、「脱炭素への3ステップ」です。
はじめにすべきことは、省エネルギーを推進し、エネルギーそのものの使用量を減らす。これがすべてに優先されるべきです。
つぎに、2の低炭素への動きです。もちろん、一気に脱炭素が実現できれば良いのですが、そんなに早く進むものでもなく、今の暮らしを守り続けるためにも、過渡期の方策が必要です。低炭素のひとつとして、石炭や石油からできる限り早期に二酸化炭素の排出がより少ない天然ガスに変えておき、きたるべき脱炭素への布石としておこうという考えです。
最後に、脱炭素です。といっても、万能薬や特効薬があるわけでもありません。
今あるエネルギーのすべてを代替できる方策なんてありませんし、どのようなやり方でもメリットとデメリットが必ず存在しています。それらを理解しながら、時代やニーズに合わせて臨機応変に組み合わせていかなければなりません。
正解なんてどこにもない。そうした混沌の時代を切り開いていくためには、冷静に全体を俯瞰する視野と深い洞察力が必要不可欠です。そのためには、いろいろな情報に触れ、どん欲に知識を吸収する姿勢も大事なことでしょう。
2.脱炭素への3ステップの注意点
省エネ・低炭素・脱炭素の3ステップは、納得感があると思います。ただし、注意も必要です。
たとえば、3の脱炭素を強力に進めるのだから、1や2はしなくていい、というのは明らかに間違いです。少なくとも、1の省エネルギーはどのような場合においても必要不可欠です。
再エネの導入を考えてみても、発電装置に必要な金属資源のほとんどを輸入に頼る日本にとって、エネルギーそのものの使用量を減らす努力はつねに継続すべきです。
また、1をやってから2をやって最後に3をやる、という順番でもありません。1と2と3をいっせいに「よ〜い、ドン!」で始めなければなりません。
もちろん、いきなり3の脱炭素が大量導入できれば、1と3だけでよいのかもしれませんが、タイムラグがある以上、2の低炭素も同時進行ですすめながら、3への布石としていくことが望ましい方策です。
あるひとつの手法に全面的に頼るのではなく、今できることをひとつずつクリアにしながら全包囲網で進めていく。これが日本の置かれている状況なのでしょう。
そのなかでも、1の省エネルギーはいつの時代でもつねに考え続けなければならない項目です。次回のコラムでは、この省エネルギーについて詳しく掘り下げてみたいと思います。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。