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2023年07月06日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話32 【省エネルギー】原理をキチンと理解して、対策しよう!

【省エネルギー】 原理をキチンと理解して、対策しよう!


 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

低炭素や脱炭素といった目的にかかわらず、いつの時代も省エネルギーは必須の対策項目です。しかし、原理を正しく理解して取り組まなければ、せっかくの努力と投資がその効果を発揮し切れない場合があります。

今回は、産業用の工場や業務用の建物で多く利用されている蒸気ボイラでよくある事例について、見ていきたいと思います。

 

1.蒸気の省エネの王道とは、なにか?

 

蒸気の設備は、蒸気をつくるボイラと蒸気を運ぶ配管、そして蒸気を利用する設備で構成されています。

省エネの教科書には、蒸気利用設備に対するさまざまな対策例が示されています。高効率な蒸気ボイラを選択する。蒸気配管の保温をキチンと補修する。適切なスチームトラップという装置を採用する。といった、蒸気を管理する担当者からすれば、当たり前の内容がたくさん書かれています。

 

当たり前の内容といっても、すべて完璧に実行できているかと言えば、決してそういうわけではありません。対策するのに多額の費用がかかるため、省エネの効果だけで考えると、どうしても対策が後回しになるケースも多くあるためです。

 

そうした対策のなかでも、「ドレン回収」はぜひとも実施していただきたい項目です。

蒸気を利用する、つまり蒸気がもつ熱を利用すると、気体状態の蒸気から液体状態のお湯に戻ります(専門的には「蒸気がもつ潜熱を利用する」と言います)。このお湯のことをドレンと呼びます。

ドレンはまだ高温の熱(圧力が高い場合は100℃以上の温度)をもっていますので、これを蒸気ボイラまで戻してきて、ボイラへの給水として再利用します。すると、15℃程度の冷たい水道水で給水するよりも、熱の有効利用につながります。

 

 

   給水タンクへ戻すドレン回収

 

こうした対策をとることで、高温のドレンをそのまま排水するのではなく、回収ドレンとして給水タンクへ戻し、蒸気ボイラへの給水に再利用する「無駄をなくす省エネ」を実施している工場が多くなってきています。

 

 

2.ドレン回収していれば、本当にバッチリ省エネなのか?

 

上のマンガ絵と同じようなドレン回収をしている工場は、多くあります。給水タンクの側面に設置されている温度計を見ても、確かに水温が上がっています。

しかし、これだけでは本当の省エネになっていないケースがあることが、わかってきました。

 

ちなみに、給水タンクの表面には保温材が巻かれているため、タンクの中がどのような状態になっているかは想像するしかありません。

まず、水位計とオーバーフロー管を確認します。タンクの中の給水タップが壊れていると、冷たい水がどんどん中にはいってオーバーフローしていきますので、故障は省エネの大敵です。

この確認が終わると、つぎは屋外に伸びている通気管を追いかけて確認します。通常の状態でも通気管の先からほんわかと湯気が出てきますが、蒸気がモクモクと排出されていることがあります。

これを、フラッシュ蒸気と呼びます。フラッシュ蒸気が大量に排出されているということは、回収したドレンの熱が逃げていることになります。

 

ドレンの熱が逃げている。これには、理由があります。

通常、ドレン回収の管はタンクの中では水面より上で切り離されています。これだけでも湯気が通気管から逃げていきやすいのですが、もうひとつ大きな問題があります。

それは、タンク内の水が十分に循環せず、上下で温度差がついていることです。お風呂に貯めているお湯で上が熱くて下が冷たい現象が起こりますが、これと同じです。

 

 

 

タンクに設置されている温度計より上は熱いけれど、タンクの下は冷たい水が溜まっていることが多くあります。ボイラへの給水はタンクの下部から配管されていますので、この状態だとボイラへは冷たい水が給水されることになります。

 

こうした現象の対策として、撹拌ポンプを設置したり、ドレン配管をタンク下部まで延伸したりすることで、タンク内部の水を循環させてやる手法があります。ただし、ドレン配管を延伸する方法については、単純な延伸だけでは振動による破壊や逆流などの問題が生じますので、注意が必要です(専門的な対策方法についての説明は、別の機会にします)。

 

ちなみに、対策によってボイラの給水温度を上げたとすれば、ボイラから出る排気ガスの温度は少し上昇します。つまり、ボイラの効率がわずかに下がります。厳密には、ここまでキチンと計算して省エネ効果を算出する必要があります。

 

今回ご紹介したような事象は、多くの事業所で散見されています。せっかく実施したドレン回収の効果が出ていないのは、もったいないことです。

技術的でマニアックな内容ではありますが、原理を正しく理解して省エネの効果を正確に把握することが重要だ、ということがご理解いただけたでしょうか?

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。



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