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2023年08月17日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話35 家庭のエネルギー利用は、海外とどう違うのか? その1

家庭のエネルギー利用は、海外とどう違うのか? その1

 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

生活をする場面でエネルギーがどのようにつかわれているのか、海外のご家庭とデータ比較しながら、私たちの生活を見直す一助としてみたいと思います。

 

 

1.日本の家庭は、海外ほどエネルギーをつかっていない?

 

グラフというものは、絶対数を示していたり割合を示していたり、世帯当たりだったり一人当たりだったり、さまざまな表現方法があります。残念ながら、あらゆる現象をすべて表現できる万能グラフは存在しておりません。

そのため、「このグラフはなにを示していて、なにを示していないのか」という裏読みまでしながら見る必要があります。

 

ここに、世帯当たりのエネルギー消費量を国別に比較したグラフがあります。

このグラフが示しているのは、一人当たりではなく世帯当たりです。ですから、家族の人数の平均が多いほど、エネルギーの使用量も多くなります。しかし、二人暮らしだからといって一人暮らしの2倍つかうわけではありませんし、三人になっても二人暮らしの1.5倍になるわけでもありません。

そうした前提を理解しながら、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

 


上のグラフは、先進7か国の比較です。G7のイタリアが韓国に置き換わっている状態です。

アメリカとカナダは突出してエネルギーを多消費していますが、世帯当たりの家族数が多いのかもしれません。フランスとドイツ、イギリスも日本の1.5倍以上のエネルギーをつかっています。寒い地域ですので、必然的にエネルギー消費も多くなるのでしょう。

 

「日本は、家庭用においても省エネ先進国だ!」

と言いたいですが、家族数がわからない状態で絶対量の比較をこれ以上議論しても仕方がありませんので、つぎに内訳を見てみましょう。

 

 

2.お国柄による暖房の違い

 

日本と諸外国との違いが顕著に出ているのが、赤い部分の「暖房」です。

カナダやヨーロッパ諸国は寒い地域に属していますので、エネルギー消費が多いことは理解できます。しかし、日本の5倍以上も暖房しているというのは驚きです。それもそのはず、諸外国では全館24時間暖房が当たり前だからです。

日本のように玄関ポーチ(外国では、扉を開ければすぐに部屋ですが…)やトイレや廊下が寒い状態というのはありえません。日本では部屋に人がいなければ暖房はつけませんし、就寝時はタイマーをつかって消します。

一方の外国では、出掛けるときでさえ暖房を切らないのがほとんどです。ちなみに、全館24時間暖房では、世帯の家族数が減ったとしてもエネルギー消費はほとんど変わりません。

 

これには、家の造りも関係しています。

石材が用いられた家屋では、一度冷えてしまうと暖めるのに時間がかかります。逆に一度暖まると、なかなか冷めにくくなります。そのため、暖房をこまめに入り切りするのがよいとは限りません。

木造家屋でも、日本の家屋とは比べ物にならないほど高い断熱性能を有しています。断熱性能が高ければ換気が問題になりますが、熱交換機付きの換気装置が装備されています。この装置だと、換気による室内温度の変化はほとんど生じないそうです。

近年、日本の家屋でも高断熱や24時間換気が推奨されていますが、日本の一般的な新築家屋でさえ欧州の断熱基準を満たしておりません。日本には春や秋といった空調が要らない中間期があり、風通しのよい家屋が求められてきたという経緯があるため、断熱性能が疎かになってきたことは否めないでしょう。

換気装置に至っては、吸気と排気を熱交換するような設備は、日本家屋には皆無です。日本の換気装置では、暖房時に換気すれば暖めた空気がそのまま屋外へ排出されます。これだと、換気することで地球を一生懸命暖めている、という状態になりますね。

 

このグラフにはありませんが、ロシアはどうでしょう。ロシアは自国内で石油や天然ガスが豊富に産出されるため、国民はエネルギー資源を格安で利用することができます。

家の断熱性能を上げるよりも天然ガスをガンガン炊いたほうが経済的、なんて笑い話もあります。実際、ロシアの暖房の多くには温度調節機構がついていないため、室内が暑くなると窓を開けて温度調節する、という嘘のようなことが本当に起こっています。

 

暖房ひとつとっても、お国柄でいろいろな違いがありますね。

ロシアによるウクライナ侵攻以来、ヨーロッパでは天然ガスの価格が日本以上に高騰しています。そのため、さまざまな省エネルギー対策が講じられています。これからは、上のグラフのような状況は過去のものとなって、日本以上に省エネ意識が高まっていくことでしょう。

 

ちなみに、薄い青色の部分は「冷房」です。日本でも冷房によるエネルギー消費が少なく示されていますが、冷房は稼働期間が短いので年間消費量は少なく表示されるようです。

ただし、このグラフを見て「冷房で省エネをしても意味がない」なんて勘違いしてはダメです。

私たちも「欧米の半分以下しかエネルギーをつかっていない」などと慢心することなく、あらゆる分野で省エネを推進していかなければなりません。

冷暖房以外のエネルギー消費の内訳については、次回で詳しく見ていきたいと思います。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。

 



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