家庭のエネルギー利用は、海外とどう違うのか? その2
「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
生活をする場でエネルギーがどのようにつかわれているのか、前回のコラムに続いて海外のご家庭とデータ比較しながら、私たちの生活を見直す一助としてみたいと思います。
1.家庭用エネルギーの海外との比較
このグラフは、世帯当たりのエネルギー消費量を国別に比較したものです。
前回のコラムでは、左からふたつの暖房(赤)と冷房(薄青)を議論しました。今回は、緑の給湯とそれより右にある調理や照明・家電を詳しく見ていきたいと思います。
緑の給湯用エネルギーですが、日本はヨーロッパ諸国よりも多くなっています。湿度が高い土地柄に住んでいる日本人はお風呂が大好きですから、給湯のエネルギー利用が多いことはよく理解できます。
日本人が海外のご家庭にお邪魔すると、シャワーのお湯をつかいすぎるとよく言われます。諸外国ではタンクに貯めたお湯をつかうケースが多いため、シャワーもさっと流す程度なのが普通です。
私たちも、シャワーを「湯水のように」浴びていないか、見直す必要がありそうですね。
最後に、照明・家電です。日本は青色で示されていますが、ほかの国では緑の右側すべての合計とお考えください。
北米は別格としても、日本はヨーロッパ諸国と比較して、照明・家電のエネルギー使用量が多くなっています。たとえばフランスのご家庭では、テレビがリビングの真ん中に置かれていることは、あまりありません。他人が訪問するリビングにテレビが置いてあることを恥ずかしいと思うお国柄です。そのため、アンティーク家具の中にテレビを格納して、普段は家具の扉を閉めているご家庭がほとんどです。
一方で、日本ではどうでしょう。大型のテレビがリビングの真ん中に鎮座しており、帰宅すると取りあえずテレビをつける。家事をしながら、見ているのか見ていないのかわからない状態でもテレビはついている。こうしたケースは多くあるでしょう。
2.家電のエネルギー消費がうなぎのぼり状態!?
日本の家庭用エネルギーの過去からの推移グラフです。こちらのグラフでは、厨房と照明・家電が分かれています。
家庭用エネルギーの内訳推移 出典)住環境計画研究所
エネルギー利用の内訳を時系列で見てみると、給湯用エネルギーが1970年から急激に上昇しています。昔は自宅にお風呂がないご家庭も多くあり、銭湯に通っていました。私も子供のころは家にお風呂がありませんでした。
やがて内風呂が各家庭に配備されていくとともに、浴槽の大型化やシャワーの利用が促進されるようになります。昔は、風呂桶で浴槽からお湯を汲みあげて身体にかけていました。しかし、シャワーの温度調節や入り切りが簡便になったことから、頭を洗ったり身体を流したりするのにもシャワーが利用されるようになり、給湯の使用量が増加したと考えられます。
ほかの理由として、家族の生活様式が多様化し、お風呂に入る時間帯がバラバラになったため、沸かし直しするなどエネルギーの増加に拍車がかかったこともあるでしょう。
こうした給湯需要もやがて横ばいになり、近年ではわずかに減少傾向になっています。これは、給湯機の省エネ性能が向上し、古い設備と入れ替わりつつあるためです。
一方で照明・家電用のエネルギーは、うなぎのぼりに上昇し続けています。
昔のブラウン管テレビは電力消費量が大きかったのですが、画面も小さかった。ところが、液晶テレビの登場とともに、電力効率は向上したものの画面がとてつもなく大きくなり、さらには一家に複数台設置も当たり前、パソコンもつかいはじめて個人ごとにAV機器を利用するようになりました。
リビングでお父さんがテレビを見ている最中でも、お母さんはタブレットで献立レシピを検索し、子供たちは自室でパソコンゲームをしている。それにともなって、電灯も各々が利用しています。照明・家電の電力使用量がかなり増えていることは、実感としてあることでしょう。
「これからは、省エネのためにテレビやパソコンを見てはいけない」なんて言われても困りますが、少なくとも見ていない時間は画面を消すなど、省エネを意識した利用を心掛けたいですね。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。