サーキュラー・エコノミーって、なんだろう?
「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。
持続可能な未来社会を実現するうえで、サーキュラー・エコノミー(CE)への転換が提言されています。でも、この言葉は人によってかなりの温度差があるようです。ある人は「CEは必然だ」と声高に発言し、ある人は「聞いたこともない」という状態です。
私もCEがすべてとは思いませんが、少なくとも理解しておくべき考え方だと思います。
1.世界人口がさらに増え続けると?
日本では少子高齢化がすすんで、人口減少が問題になっています。
しかし、世界に目をむけると人口は80億人を超えており、さらには100億人とか110億人まで増えると予想されています。そして、アジアやアフリカ諸国を中心に人々の生活レベルも向上していきます。
これはこれで望ましい発展の姿ではありますが、地球環境への負担や地下資源の枯渇を考えた場合、限界がくるのではという意見があります。
人為的な二酸化炭素の排出も、なにも対策をとらなければ大変な状態(地球温暖化)になると言われています。
素人考えでは、もともと地上にあった炭素成分が地下の化石燃料になっただけなので、もう一度地上に戻したらなぜ温暖化になるのか感覚的に理解しにくいのですが、そうなるのだそうです(笑)。
いずれにしても、容易に採掘できる安価な地下資源(エネルギー資源+鉱物資源など)には限りがありますので、いずれは資源価格の高騰につながっていくことは自明です。
日本には地下資源がほとんどありません。資源貧国の日本にとって、地下資源の利用を低減していくことは、国益に合致しているとも言えるでしょう。
そこで出てきたのが、サーキュラー・エコノミーです。
従来の産業構造では、地下資源を採掘して加工し、製品として利用したら捨てています。これを、リニア・エコノミーと呼んでいます。
一方で、地下資源の採掘は限定的なものに縮小し、製品として利用したら捨てずにすべてリサイクルに回して、もう一度製品に加工します。資源がぐるぐる循環しているので、サーキュラー・エコノミーと名づけられました。
2.CEは、3Rとは違う?
リサイクルと聞けば、廃棄物処理の3R(スリーアール)を思い浮かべる人もいます。
3Rとは、リデユース・リユース・リサイクルの頭文字をとっています。日本語で言えば、減量・再利用・再生です。
この3Rには、順番があります。
はじめにリデュース(減量)がきます。廃棄物の発生そのものを減らそうというものです。つぎに、リユース(再利用)。捨てる前に、もう一度利用できるものはないか工夫する。最後に、リサイクル(再生)です。
リサイクルとは、廃棄物にエネルギーをもう一度投入して資源化し、製品として再生させることです。しかし通常は、元の素材としての品質を確保できずに、製品の品質が低下してしまいます。
なぜ品質が低下するのかというと、廃棄物の純度の問題があります。アルミ缶やビール瓶のように、単一の素材として収集しやすいものであれば、品質の低下は避けることができます。
しかし廃プラスチックのように、集められた資源ゴミの中にはポリエチレンもあればポリプロピレンもあって、完全に分別することは不可能に近い。完全に分別できない限り、もとの素材に戻すことが難しく、どうしても品質が低下してしまうのです。
そのため3Rの概念では、リサイクルは最終手段として位置づけられています。
先進国から発展途上国へプラゴミが輸出されていることが、たびたび問題視されています。そこには、分別が手作業に負うために先進国では人件費がかかる、という課題が横たわっています。
もちろん途上国においても手作業で完全分別ができれば良いのですが、区別しやすいものだけを集めるにとどまってしまい、残りはゴミの山として貯められた状態になります。風で飛散することもあるでしょうし、心無い事業者が海洋投棄することだってあり得ます。
ちなみに、サーキュラーエコノミー(CE)の推進者には、CEと3Rとはまったく別ものであり混同してはならない、と発言される方も多くおられます。
確かに、廃棄物だけを対象として考えられた3Rは、CEとは別次元の発想です。ただ、3Rの概念はわかりやすいということと、CEではリサイクルが重視され過ぎてしまう危険性があることから、個人的には3Rの考え方を拡張してCEを理解するステップとしてみてはどうかと考えています。
次回のコラムでは、3Rの概念を拡張したCEを考えてみたいと思います。
このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。