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2024年03月01日 by 熊走 珠美

ニューヨークで「ハイライン」を歩く −情報誌『CEL』134号の発行


こんにちは。エネルギー・文化研究所の熊走(くまはしり)珠美です。私は研究所が発行する情報誌『CEL』の編集を担当しています。

このコラムでは、情報誌『CEL』の内容や制作にまつわるお話について書いています。今回は、本日3月1日に発行した『CEL』134号の特集テーマ「ウォーカブルの本質を考える」についてご紹介します。

 

1.そもそも「ウォーカブル」って何?


この特集テーマを選んだとき、研究所のメンバーで「ウォーカブル」について議論しました。すると、それぞれが抱く「ウォーカブル」のイメージが少しずつ違っていることがわかりました。「歩くことができる」「居心地が良く、歩きたくなる」「車中心から人中心へ」から始まり、「そうした空間を実現するまちづくり」「パブリックスペースの創出」「居場所をつくる」「都市の価値を高める」・・・と、イメージはどんどん膨らんでいきます。「ウォーカブルなまちづくり」に取り組む方法も、大都市や地方の中心市街地ではアプローチや捉え方が異なります。「歩いて楽しいまちをつくる」程度に捉えていた「ウォーカブル」が、実は重層的で奥深いものであることに初めて気付かされたのでした。

今回の特集では、国内の「ウォーカブル」への取り組みや考え方を紹介するだけでなく、海外の事例、ジェンダーやインクルーシブな視点の大切さについても語っていただいています。

この特集を読むことで、「ウォーカブル」の新たな視点を発見してもらえるとうれしいです。

 

◆情報誌『CEL134

https://www.og-cel.jp/issue/cel/1776884_16027.html

 

2.清潔で安全な街に変貌したニューヨーク


本特集でも随所に言及されていますが、“ウォーカブル先進国”であるアメリカで、「ウォーカブルなまちづくり」につながる「パブリックスペース・ムーブメント(公共空間を主題とした都市全体にわたる改革運動)」に取り組む都市の代表がニューヨークです。

私はミュージカルが好きで、国内でもよく観劇しているのですが、近年は趣味が高じてニューヨークのブロードウェイまで遠征するようになりました。2011年からコロナ禍前の2019年まで、ほぼ毎年のようにニューヨークを訪れています。2011年、約20年ぶりにニューヨークを訪れた際には、あまりの変貌ぶりに驚きました。汚くてこわかった地下鉄は明るくフレンドリーになり、公園や道路は清潔で歩きやすく整備されていました。ブロードウェイの中心であるタイムズスクエアには観光客があふれ、終演後の遅い時間帯でも安心して道を歩いたり、食事したりできます。ニューヨークは清潔で安全な街になっていたのです。


ブロードウェイの中心地・タイムズスクエア。ミュージカルおたくは、

舞台の看板を見ただけで何年に撮影されたものかがわかる(20194月撮影)

 

3.「ハイライン」を歩いてみた


そんななか、パブリックスペース・ムーブメントの成功例として日本でもよく耳にするのが、「ハイライン」です。これは、マンハッタンの14丁目近くから34丁目まで南北に伸びる、全長2.33kmの線形公園です。ウエストサイド線と呼ばれていたニューヨーク・セントラル鉄道の廃止した支線にあたる高架部分に建設されたもので、2006年に工事が始まり、2009年から段階的に公開されています。私がハイラインを最初に訪れたのは、2013年の春。ニューヨーク滞在中は毎日観劇の予定を入れるのですが、マチネ(昼公演)のない日中は、美術館や買い物で時間をつぶします。その日は、ハイラインの南側に位置するミートパッキング・ディストリクト(元、精肉工場があった地区。現在はオシャレな店が点在する人気エリア)にあるレストランで昼食をすませたあと、ハイラインを散歩しました。ハイラインは、公園と言うよりも空中遊歩道という感じで、観光客は思い思いのペースで歩いています。歩くことに疲れたら、途中に置かれたベンチで休憩することもできます。

実際に歩いてみるまでは、「信号のない遊歩道」程度のイメージでしたが、地上約9mの高さから見えるマンハッタンの景色は全く違いました。新緑の季節、道の脇に咲く花々や木々を楽しみながら歩いていくと、ビルの合間からエンパイヤ―ステートビルやハドソンリバーが見えます。「目の高さが変わるだけでこんなにも楽しいとは!」と、まさに目からうろこ状態だったことを覚えています。所々にのぞく古い線路の跡は、ここが鉄道であったことを忍ばせ、楽しくて気持ちの良い散策をすることができました。

 

ハイラインは2013年時点では完成しておらず、まだまだ延伸するとのことだったので、2018年にふたたび訪れてみました。そのときはアッパー・イーストサイドからハイラインの南側に移転したホイットニー美術館の訪問とのセットで散策しましたが、5年前とは比較にならないほどの人気で、たくさんの観光客が歩いていました。しかし、基本的に皆さん、どんどん歩いていて滞留することがないので、ストレスを感じることはありません。


 

ホイットニー美術館から見下ろしたハイライン(20185月撮影)

 

4.進化する「ハイライン」


ハイラインの南周辺にはもともと観光客に人気のチェルシー・マーケットがありますが、ハイラインを訪れる人の増加とともにマーケットも賑わいを増しています。2019年には、ハイラインの北側に新しくできたハドソン・ヤードを訪れ、完成したばかりの展望台・べッセルに登って景色を楽しみましたが、こちらもニューヨークの新しい観光スポットとして多くの人を集めていました。こうした周辺エリアを食事や買い物で訪れ、そのあと、近くの階段からハイラインに登り、景色を楽しみながら散歩する。ある程度歩いたら、またハイラインから降りて、最寄りの駅から地下鉄に乗り次の目的地に行く・・・といった移動を組み合わせた楽しみ方ができるのもハイラインのメリットだと感じました。

 

私のニューヨーク遠征はコロナ禍で中断してしまいましたが、今回の特集でウォーカブルの意味を色々と考えた今、またニューヨークに行く機会があれば、新たな気持ちで進化するハイラインを歩きたいと思っています。


 

開業直後のベッセル。蜂の巣の形をした地上46mの展望台だが、

現在は閉鎖中のため登ることはできない(20194月撮影)

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