大阪ガスネットワーク

エネルギー・文化研究

  • サイトマップ
  • お問い合わせ

CELは、Daigasグループが将来にわたり社会のお役に立つ存在であり続けることができるように研究を続けています。

  • DaigasGroup

JP/EN

Home>コラム

コラム

コラム一覧へ

2024年10月18日 by 前田 章雄

【歴史に学ぶエネルギー】48.米ソの動きを妄想してみる…

「歴史に学ぶエネルギー」をシリーズで考えています。目次にある「オイルショックからのソ連崩壊」と「軍産複合体アメリカの謀(はかりごと)」について、妄想してみたいと思います。ただし、著名な経済学者や政治学者が述べられている学説ではなく、あくまであるひとりの男(筆者)の個人的仮説ですので、ご注意ください。

 

1)オイルショックからのソ連崩壊

オイルショックによる原油高騰は、新規の油田開発の活性化につながっていきました。それまで採算が合わなかった深海からの掘削もはじまります。

そうなると、つぎに起こるのは暴落です。二度のオイルショックで1バレル30ドルを超えた原油価格でしたが、それが10ドルを下回るようになるのです。

もちろん、こういった暴落は一時的なもので、やがて供給量が確保されてくると、高騰した原油価格が落ちつきをみせるようになります。しかし、30ドルに戻ることはなく、20ドル前後で比較的安定した時代を迎えます。その後、瞬間的には湾岸戦争の影響で高騰したこともありましたが、長い目で見ると、1980年代と1990年代は20ドル前後の安定期だったと言えるでしょう。

1960年代のメジャーによる収奪期を経て、1970年代はOPECによる政治的戦略商品と化し、そして2000年頃までの約20年間は需要と供給に左右される性格を帯びてきました。歴史上はじめて、石油が一般的な商品と同じ動きをするようになったのです。

 

オイルショックで高騰した石油価格が下落してもっとも困るのが、当時のソ連でした。

冷戦時代、疲弊しきっていたソ連経済ですが、石油や天然ガスといった資源の輸出でなんとか外貨を稼いでいました。そのソ連の経済が、オイルショックで息を吹き返します。

一度、石油のうま味を知ってしまうと、依存体質が完成されてしまいます。東側最大の国であったソビエト連邦も例外ではありませんでした。石油高騰で外貨を稼いだソ連でしたが、それが国内の産業育成にむかうのではなく、連邦政権の維持にのみ利用されていました。そのため、石油価格の下落によって、やがて連邦解体へと導かれることになるのです。

それと同時に、ソ連の衛星国にも変化が訪れます。彼らにとっては、石油価格の上昇が新たな収益を生み出しました。カスピ海沿岸を中心にあらたな石油掘削がはじまり、経済が上向いてくるとともに独立心が芽生えます。中東諸国が西側列強の支配から逃れようとしたのと同じく、東欧諸国もソビエト連邦の支配から逃れようとするナショナリズムが勃興したのではないでしょうか。

ゴルバチョフのペレストロイカにはじまった共産圏改革のうねりは驚異的な速さで広がり、やがてベルリンの壁崩壊へとつながっていきます。

このように、オイルショックがソ連を復活させ、オイルショックがソ連崩壊の引き金のひとつとなった。という妄想を筆者はしています。

 

2)軍産複合体アメリカの謀(はかりごと)

ゴルバチョフとレーガンが信頼関係を築くことでソ連の脅威が消え去ると、アメリカは自国の防衛費に振りむけてきた資本と人材を経済分野でつかえるようになりました。家電など競争力の落ちた既存の産業分野は放棄したり海外に移転したりして、将来有望なITと金融に資本と人材を集めていきます。

 

逆説になりますが、一方でアメリカ大帝国の軍産複合体は、冷戦の終結によってあらたな収益確保を必要としていました。

すると、しばらく静かであった中東でイラク戦争がはじまり、軍事装備の価格が急上昇します。銃器や防弾チョッキなど、戦場の兵士が身につける装備や装甲車の価格が、一気に数倍へ値上がりしたのです。

ここに2001年の世界の軍需企業の契約高ランキングデータがあります。トップ10のうち7社がアメリカ企業であり、合計で50兆円近くの売上高となっています。すさまじく大きな市場です。当時、急増する中東の軍事費の多くは、アメリカの軍需産業のぼろ儲けにつながっていたのです。

真相が闇のなかからでてくることはありませんが、中東のさまざまな紛争も暗雲のなかの謀(はかりごと)で起こされてきたのかもしれません。

じつは2000年11月、フセイン大統領が石油取り引きを「ドル建てからユーロに切り替える」と表明したことがあります。すると、すぐさまイラク侵攻が起こってフセイン政権が崩壊し、イラクの石油取り引きはドル建てに戻されているのです。戦争の口実であった大量破壊兵器が発見されることはありませんでしたが、フセインは死刑を宣告されて処刑されました。

 

中東情勢が落ち着いてきた現在、次なる標的はカネ余り大国日本です。プラザ合意で日本の所得をアメリカに移したあとは、高額の軍事物資を売りつける可能性があります。すでに戦闘機を何台も購入してはおりますが、近年では物になるかどうか第三者からはわかりにくかったイージス・アショアなるミサイル防衛システムも導入がすすめられました。導入直前になって、当時の河野防衛大臣が購入をキャンセルしましたが、もしかすると無用な高額出費となることろでした。

しかし、軍産複合体アメリカがおとなしく引き下がるとは到底思えません。アフガン侵攻や湾岸戦争で懲りたアメリカが、あからさまな戦争を画策するとは考えにくい状況で、次なる標的日本になにを押しつけようとするのか、要注意です(あくまで、筆者の妄想です)。



このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。


  • U−CoRo
  • 語りべシアター
  • 都市魅力研究室
  • OMS戯曲賞
Informational Magazine CEL

情報誌CEL

【特集】場づくりのその先へ −つながりから社会を変えていく

近年、まちづくりにおいて「場づくり」が注目されています。 その試みは、時に単なる...

バックナンバーを見る
  • 論文・レポート・キーワード検索
  • 書籍・出版
  • 都市魅力研究室
  • FACEBOOK

大阪ガスネットワーク(株)
CEL エネルギー・文化研究所

〒541-0046
大阪市中央区平野町4丁目1番2号

アクセス