都市成熟時代の京阪神圏の将来を発展的に展望

『都心・まちなか・郊外の共生　―京阪神大都市圏の将来―』の執筆にCEL研究員加茂みどりが参加しました。

 

都市住宅学会関西支部「都心郊外共生研究委員会」（主査：広原盛明京都府立大学名誉教授）の数年間にわたる活動の成果が、書籍として発行されました。「都心」「まちなか」「郊外」における新たな居住様式に着目し、京阪神大都市圏の将来を展望する一冊です。（第１１章「京都都心における地域住民とマンション住民の協働―都心的まちなか居住の可能性―」の執筆を大阪ガスエネルギー・文化研究所加茂みどりが担当いたしました。）

平成２２年７月１６日に、出版記念シンポジウムがガスビル３階ホールにて開催予定ですので、ご参加ください。（後日告知予定）

 

編者代表・広原盛明氏による紹介

２１世紀の日本は、いままさに歴史上はじめて構造的な人口減少時代に入りつつあります。この歴史的転換期にあって、京阪神大都市圏の将来はいったいどうなるのでしょうか。本書は、巷間いわれるような人口減少にともなう都市衰退論を退け、都心・まちなか・郊外の共生を通して都市成熟時代の京阪神圏の将来を発展的に展望しようとしました。京都、大阪、神戸の３都市からなる京阪神大都市圏は、これまで大阪・京都に代表される伝統的な「まちなか居住」、阪神間モダニズムを生んだ「郊外居住」、そして各都市都心部に新しく形成されつつある「都心居住」という３つの個性ある都市居住様式を育んできました。しかし成長時代に都心・まちなか・郊外というように輪切り状に形成されてきた大都市圏は、いま成熟時代へ移行するなかで同心円型から多核ネットワーク型へと大きく変化しています。それとともに「都心＝職」、「まちなか＝職＋住」、「郊外＝住」というこれまでの都市空間と居住様式の対応関係が崩れ、それぞれの地域に職・住・余暇が複合化した新しい居住様式が生まれつつあります。本書は、これらの「新都心居住」、「新まちなか居住」、「新郊外居住」の共生関係を通して、京阪神大都市圏の将来の姿を描こうとするものです。

 

広原盛明・髙田光雄・角野幸博・成田孝三　編著

晃洋書房　発行

A５版　432頁

定価　3800円（税別）

問い合わせ先：晃洋書房　TEL　075-312-0788

 

目次・著者

第I部　総論編　京阪神大都市圏の変容と将来

　　　　　　―拡大型大都市圏から安定型大都市圏へ―

第１章          京阪神大都市圏再生への生活者・居住者視点

広原盛明（京都府立大学名誉教授）

第２章          京阪神大都市圏の地域構造、空間構成の特徴

　―三極構造から多極型ネットワーク構造へ―

成田孝三（京都大学名誉教授）

第２章資料　京阪神大都市圏の住宅地開発状況

石原一彦（立命館大学政策科学部教授）

 

第II部　郊外編　郊外居住とまちなか居住の接合

　―内・外・超郊外の再編・再生の方向―

第３章          郊外住宅地の変遷と行方　―ブルジョア・ユートピアから超郊外まで―

角野幸博（関西学院大学総合政策学部教授）

第４章          戦後郊外戸建住宅地の再生　―コミュニティの活性化を通して―

水野優子（武庫川女子大学生活環境学部助教）

第５章          遠隔郊外住宅地の衰退と再編方向

　―地方都市・農村部との田園ネットワークは可能か―

今井範子（奈良女子大学生活環境学部教授）

第６章          私鉄沿線郊外住宅地開発の新展開

　―駅勢圏をコアにしたコンパクトシティの再構築―

熊見豊明（株式会社京阪エンジニアリングサービス常務取締役）

第７章          郊外ニュータウンのオールドタウン化とその再生

　　　　　　　　　　　　　　　―公共・民間セクターのコラボレーション―

三好庸隆（武庫川女子大学生活環境学部教授、PPI計画・設計研究所取締役会長）

 

 

第III部　都心編　都心居住とまちなか居住の接合

　　　　　　　　　　　　　　　―都心空洞化から都心回帰へ―

第８章          都心居住の再生可能性　―ワークライフバランス改善の視点から―

髙田光雄（京都大学大学院工学研究科教授）

第９章          大阪都心における地域資源・地域活動との関わりと都心居住

安枝英俊（京都大学大学院工学研究科助教）

第９章補論　都心居住の受け皿としての超高層マンションの可能性と限界

澤田悠紀夫（NPO法人これからのまち・建築・みどりをつくる会副理事長）

第１０章    　大阪の歴史的都心核・船場の再発見

　　　　　　　　　―魅力ある暮らしのコミュニティの再生に向けて―

谷口康彦（船場淡路町ラボ）

第１１章    　京都都心における地域住民とマンション住民の協働

　　　　　　　　　　　　　　　―都心的まちなか居住の可能性―

加茂みどり（大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所主任研究員）

第１２章    　阪神大震災以降の神戸の都心再生と都心居住

小林郁雄（神戸山手大学教授）

 

第IV部　政策編　まちなか居住を基盤とする京阪神大都市圏の再編・再生方策

第１３章　京阪神大都市圏におけるまちなか居住政策の変遷と課題

戸田光学（大阪府庁）

第１４章　都心郊外再編の道筋

角野幸博（関西学院大学総合政策学部教授）

終章　まちなか重視の都市・住宅政策論をめぐって

広原盛明（京都府立大学名誉教授）