小川 雅由
2008年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2008年06月30日 |
小川 雅由 |
住まい・生活 |
食生活 |
情報誌CEL (Vol.85) |
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つくり手が見えなくなってしまった「食べ物」が問いかけるもの
二〇世紀に入り急速に発展した工業化社会は、人々の暮らしに物質的な豊かさをもたらした反面、大量生産・大量消費・大量廃棄という社会経済の仕組みから、種々の公害問題のみならず地球温暖化問題など深刻な環境問題を生じさせてきた。
また、都市化の進展や後継者不足などの要因で、都市近郊からは里地や里山といった「農」を軸とした地域社会の原形が失われ、そのことにより、人々の暮らしの中から「農」が消え、「農」は農業として教科書で習うものでしかなくなってきたのではないか。
多くの市民は、野菜やお米を栽培した経験はなく、自分たちが毎日たべている食材が、どこで、どのようにして、誰がつくってくれているのかというようなことも全く見えない状況となっている。
人が生きていく上で最も大切な「食べ物」に対して関心を持たず、価格と外見だけで購入してきたのが現状で、気がついてみれば、日本の食料自給率は三〇%台となり、大半の食材を海外に頼り、食べ物の安全性すら心もとなくなってしまっている。
こうしたことへの危機感から、平成一七年には食育基本法が制定され、これを実現するため食育推進基本計画を策定するなど、厚生労働省や農林水産省、文部科学省などの関係機関が、それぞれの立場から「食」のあり方を見直す動きが高まっている。学校教育の現場で、家庭や事業所の中で、そして農林水産業といった食を担う一次産業の現場でも、具体的な取り組みが報告されるようになってきた。