豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2003年09月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.66) |
生活向上のための生活経済論
個人の自己破産の件数が昨年は二十一万四千件あまりと、前年と比較して三四パーセント近くの増加となった。背景に長引く不況が影響していることは間違いない。日本経済の先行きを展望しても、少子高齢化や中国等周辺諸国の発展など、大きく改善する要素に乏しい。したがって、家計を取り巻く経済環境は引き続き厳しく、個人の生活における管理、経営といった取り組みが今後一層重要性を増していくと考える。
本稿は、私たちの生活の向上に資する生活経済・生活経営の考察が不十分であるとの認識の下、それに関してどのように取り組んでいけばいいのかについて考察することを目的としている。具体的には、まず、パーソナル・ファイナンスを起点とし、個人のライフプランの作成を通じて、各種論点の吟味をすることが本人の生活の向上に資することを主張する。次にそのプランを十分意味のあるものにするために、経済学などの知的な蓄積がどのように支援できるかについて関連付けを行う。その際、個人の生活を対象にする場合には、経済学だけでは不十分であり、その他の学問分野(ディシプリン)も同時に活用することが不可欠であることを論じる。最後にそれを取りまとめることによる、生活経済、生活経営論の可能性を展望する。
パーソナル・ファイナンスを起点に
本稿では、個人の生活を向上させるための生活経済、あるいは生活経営という切り口を採用する。もちろん、生活経済(経営)に関しても、既に様々な研究が行われている。特に家政学の一分野としての生活経済・生活経営論は問題意識の多くを本稿と共有している。それらとの違いを明確にすれば、ここでは生活向上のために不可欠なキャリアデザインや社会との関係性構築、あるいは生活の前提となる価値観や動機付けまで考察の範囲に含めようという態度をとっていることである。