弘本 由香里
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研究領域 |
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備考 |
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2006年03月30日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
新聞・雑誌・書籍 |
大阪府文化団体連合会『大阪府文化芸術年鑑2006年版』 |
内発型まちづくりの文脈から
地域固有の文化が失われていくなかで、再び地域文化に目を向ける動きが活発化している。地域文化とは、地域の暮らしの安心や心の豊かさを支える貴重なソーシャルキャピタル(社会関係資本)であり、地域文化の喪失は、子どもから高齢者まで地域に生きるあらゆる人々の暮らしに大きなリスクを与えることが、明らかに認識されるようになってきたといってもいいのではないだろうか。
こうした背景から、地域文化をめぐる構図で近年顕著なのは、地域資源を活かした内発的なまちづくりへの志向であり、目指すべき都市像として「創造都市」というキーワードが用いられることも多い。そこでは、地域に蓄積された歴史文化・生活文化と、新たな価値を創造する芸術文化とが、両輪として必要とされる。確かに、アート系のNPOが地域にコミットする活動を展開する例が数多く見られるようになり、地域まちづくりの現場では歴史文化・生活文化の再発見が、身近なテーマとしてさまざまな活動団体によって取り組まれ普及してきている。
上記のような動向の典型例といえるような、いくつかのトピックを以下に紹介しよう。
アート系NPOが向き合う地域文化
この数年で、アート系のNPOの数は着実に増えており、個々の専門領域やミッションを超えて、より高次のミッションを共有する横断的なネットワークの形成も見られるようになってきている。そうした動きを象徴していたのが、2005年11月から12月にかけて開催された「第3回大阪・アート・カレイドスコープ」だろう。主催は大阪府立現代美術センターだが、企画・運営は大阪を拠点に活動しているアート系NPO8団体(大阪アートNPOコンソーシアム)が担った。プログラムの中には、地域の生活文化の映像記録を収集・上映するプロジェクトや、地域の歴史の痕跡を巡るアートツーリズム、まちを歩くことによって作品を生み出す作家のプロジェクト、地域社会とアートをテーマにしたダイアログ(対話)などがあり、地域文化に向き合う数々の取り組みが特徴のひとつとなっていた。