前市岡 楽正
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2003年03月31日 |
前市岡 楽正
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住まい・生活 |
その他 |
CELレポート (Vol.17) |
・ 右上がりの年齢別賃金カーブは日本独自のものではないが、その背後に潜んでいる職務のあり方は特殊日本的である。その重要な要素は、職務の不明確さ(職務範囲の曖昧さと広範囲な異動)、人事評価の曖昧さ(職務遂行能力の評価,広範囲に及ぶ評価項目)、長期にわたる僅差での累積的な昇給・昇進システムの3つである。こうした仕組みが大量の会社人間を産み出してきた。
・ 今後長期的には、年齢別賃金カーブの傾きは緩やかになっていくとみられる。その際重要な問題は、年功に代わる給与・ポストの決定要素を何にするかである。職務遂行能力......を基準にする職能給という選択(薄められた年功制)はモラールを低下させるだろう。また、業績..という選択(例えば年俸制)が合理的なものであるためには、職務が明確に規定されていることが前提となる。結局のところ、職務..主義への漸進がとるべき道であろう。その利点としては、合理性・説得性、職務の明確化がもたらす好影響、モラールの維持、労働費の高齢化・高学歴化からの中立性などがある。職務主義は、他の選択肢よりは経済合理性において優れていると考えられる。また、それの持つ会社人間減少への効果は大きい。
《本文》
年功賃金の時代は終わり、能力主義の時代が始まるという。そうかもしれない。しかし賢明な選択ではない。代案は職務主義への漸進である。
[長期雇用と年功賃金は崩壊しつつあるか]
終身雇用と年功賃金は、企業別労働組合と併せて、日本的雇用慣行の「3種の神器」といわれてきた。終身雇用とは、主として学校卒業と同時に採用され、一定の年齢(定年年齢)まで雇用されることをいう(以下ではより適切な用語である長期雇用を使用する)。年功賃金とは、年齢や勤続年数に応じて上昇していく賃金制度(右上がりの年齢別賃金カーブとして顕れる)であると、一般的には理解されている。長期雇用は年功賃金の必要条件である。