前市岡 楽正
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2002年12月28日 |
前市岡 楽正
|
住まい・生活 |
その他 |
CELレポート (Vol.16) |
・ 本稿は、われわれが当面する経済危機脱出へのヒントをケインズ『一般理論』に探ろうとするものである。『一般理論』は20世紀最高の経済書であり、第1級の古典であるにとどまらず、事態の推移によって、今後ますますその重要性を増すものと思われる。
・ ケインズの基本認識は、市場経済は、完全雇用に対応する所得よりも低い水準の所得に止まる傾向を持ち、完全雇用に向かって回復する力を備えていないというものである。さらに、市場経済は不安定化の度合を高めていくだろうという。
・ ケインズによれば、現実に実現する生産(所得)は消費と投資の合計(総需要)の水準に決定される(有効需要の原理)。
・ 消費は...、短期の完結した体系としてのケインズ理論においては所得の関数であるが、ケインズは所得以外の様々な要因を検討している。そのうち、現代日本との関連で重要と考えられる要因は、社会保障の縮小や雇用の不安定化による不確実性の増大.......と、分配の...不平等化....の2つに集約できる。
・ 投資..は.、資本の限界効率(付加的な投資の期待収益率)と利子率の2要因によって決定される。2要因のうち、われわれにとって重要なのは資本の限界効率である。所得水準が上昇していくとき完全雇用のために必要な投資はますます大きくなり、したがって、資本の限界効率の重要性はますます高まる。ところが、資本の限界効率は短期的にはきわめて浮動的であり、かつ、その浮動性を増していく。加えて、それは長期的には低下していくと予想される。
・ 彼が提案する政策は、投資のコントロール(低金利政策と「投資のやや広範囲な社会化」)、消費性向の向上(租税による所得の平等化)である。
・ 完全雇用へ向かう回復力の存否を巡る対立は、19世紀の初めから、ケインズによる革命と反ケインズ革命の時期を経て、現在まで続いている。この対立は最終的には経済観の問題であるが、停滞が長期化すればケインズ的立場が優位に立つことになろう。現実対応としては、自律回復力がないかのように.......行動するのが賢明であると思われる。